次に僕は西の浜で撮った写真の数々を真澄に披露した。実際に自転車で西の浜に行くのは少々厄介だった。港の近くから民宿の脇を通る未舗装の細い道を轍にそって自転車を漕がなければならなかった。轍の間の部分は結構背の高い草が生えていた。標識も何もない場所で右に入り、坂を上りきったところで自転車を止める。そこからほとんど草に埋もれた獣道のような細い道を下ると浜に出る。右に折れて映画に登場する巨大なカメの怪獣のような岩を通り越すと大きな眺望が開ける。「黒島ブルー」は右端に小さくなるが西表や小浜との間の海は澄み切った美しい色をしていた。
 真澄は相変わらず黙って写真を見つめるばかりだった。
 その次に見せたのは伊古桟橋の写真だった。伊古桟橋は竹富島の西桟橋と似ていたが、長さは西桟橋と比べるとかなり長かった。西桟橋では小浜島の後ろに西表島が重なって見えたが、伊古桟橋では正面に見えるのは小浜島だけで西表は左手にあった。伊古桟橋は干満による景色の変化が大きいので時間を選んで来ないといけないのが難点だった。