「ああ、もちろん。じゃあ、ノートパソコンの置いてある方に行こうか」
「うん」
 僕たちは立ち上がり寝室に置かれた机の方に向かった。とりあえずノートパソコンの電源を入れキッチンに真澄の分の椅子を取りに帰った。
「はい、どうぞ」
 僕は机用の椅子の脇にキッチンの椅子を置いた。
「ありがとう」
 真澄は一言礼を言うと椅子に身を預けた。
 それから僕は黒島の写真を貯めたフォルダを開き、まずは石垣からの船が大きく左折して黒島港に入る直前の海を見せてあげた。
 青とも緑ともつかぬその澄んだ美しい色はなんとも例えようがなく、真澄の望み通り写真を見せたのは正解だったと思った。僕が次々と写真を表示すると真澄はその度に感嘆の声を上げた。
 船から撮った写真を見終わったところで、僕は真澄に黒島の交通事情を説明してあげた。
「黒島はね。小さくて平らな島なんだ。レンタカーなんてないから移動はもっぱら自転車だね」
「そうなんだ」
 真澄がそう答えた後、今度は港の防波堤から撮った写真を見せることにした。
「次は港の防波堤に登って撮った写真。対岸の小浜島との間の海がすごく奇麗だろう。濃いスカイブルーって言えばいいのかな。僕は勝手に『黒島ブルー』って名前を付けているんだ」
 さっきまではうるさい位の声を上げていた真澄は、一転して食い入るように画面をのぞき込んだままで何も言ってこなかった。真澄はまるで写真の中の神秘的とさえ言える海の青に魂を奪われているかのように見えた。