八月八日(土)

 朝食が済むと、僕たちはキッチンのテーブルで次の曲の打ち合わせを始めた。土曜日なのでたっぷり時間が取れるのが嬉しかった。
「次は黒島の歌を作ろうと思うんだ」
「黒島ってどんな島なの?」
 真澄に尋ねられたので、僕は少し黒島について話をすることにした。
「黒島は石垣から船で三十五分位の所にある小さなハート形の島なんだ」
「じゃあ、あまり人は住んでいないのかしら」
「そう、そうなんだ。人よりも牛の数の方が多いんだ。とにかく人にはあまり会わないし、食事ができるところが少ないうえにお休みが多くてね」
「あまり観光地化されていないのね」
 真澄は八重山の島々の状況にかなり理解が深まってきたようだった。
「そうだね、僕はよく行くけど、確かにあまり見どころの多い島ではないね」
「じゃあ、どうして、純さんはよく行くの?」
 真澄は不思議そうな顔で僕を見つめた。
「それは海がすごく奇麗だからだよ」
「なるほどね。そんなに奇麗なら私も見てみたいな。ねえ、純さん、黒島の写真見せてくれない?」
 真澄は俄然、黒島の海の色に興味が湧いたようだった。