八月七日(金)
その日の夜、与那国の歌はできあがった。真澄から良いアイデアをもらっていたので歌詞はすんなりと完成していた。
しかし曲の方は少し難しかった。後半で転調する前は沖縄の音階を使ったのだが、西洋音階のようにドレミファソラシドの八音ではなく、ドミファソシドの六音でメロディーを作るのは少々骨が折れた。だが、その甲斐あって出来上がった歌は三線にもよく馴染んだし、他の歌とは歌詞も曲の雰囲気も違った味わいを出すことができた。
出来上がった歌を真澄に聞いてもらうために、僕たちはいつものようにベランダ側に並べた座布団に腰を下した。そして僕は三線のイントロに続けて望郷の歌を歌い始めた。
与那国島は西の果て
最後に夕陽沈む島
遠く離れて東京で
故郷思い見る夕陽
ビルの谷間に、今、沈み
これから島に行くのなら
ティダン(太陽)よ、心伝えてよ
島で待ってるあの人に
今日は台湾見えました
写真の付いたメール見て
すぐに返事は書けるけど
切なさ添付できません
寂しさ募るこんな夜は
花酒飲んで寝てしまおう
島へ帰れるその日まで
頑張れ少しあと少し