「なるほど。でも、僕は東京出身だから与那国にいる真澄さんのことを考えても望郷の歌にはならないよ」
 僕はそう言ったが真澄の中ではすでに問題は解決済みだった。
「そうね。だから少し手を加えるの。純さんは与那国から東京に出てきて、故郷に残してきた恋人を思っているという設定にすれば良い歌ができるんじゃないかしら?」
「確かにそれは良いアイデアだね」
「そうでしょ」
 真澄は少し得意げな顔をした。
「その線でいってみることにするよ」
 僕が答えると真澄は曲に関してもかなり具体的なアイデアを出してきた。
「それじゃあ、メロディーは全部でなくて良いけれど沖縄の音階を使ってみたらどうかしら?このところ四拍子の歌が多かったから、三拍子で作ってみるのも悪くないと思うな。結構ユニークな歌になるかもしれないわね」
「ああ、確かにそれは面白そうだね」
「良かった。私、少し役に立てたね」
真澄は天井の方を見上げて嬉しそうに笑った。