理由は見当がつかなかったが、なにやら真澄は嬉しそうな顔をしていた。
「楽しかったよ。念願の『海底遺跡』も無事に見られたしね。でも、真澄さんの顔が見られなくてちょっと寂しかったかな」
 寂しかったなどという言葉がなぜだか自然と口から洩れた。
「そう。とりあえず、荷物を下して、楽にしたら?」
 真澄に促されて僕は荷物を下した。そしてベランダに続くドアの所に置かれたままになっていた座布団に腰を下した。真澄も隣に座るとぽつりと言った。
「私もね、純さんがいなくて寂しかったわ」
「ごめんね」
 本当に申し訳ないことをしたという思いでいっぱいだった。
「そんなこと、純さんが謝ることじゃないよ。私はオバケなんだから仕方がないわ」
 僕は真澄にそういう卑屈な台詞を口にして欲しくなかった。だから少し口調がきつくなってしまった。
「自分のことオバケなんて言うなよ」
 真澄は俯くと少し悲しげにつぶやいた。
「純さんは本当に優しいね」
 優しくなんかないと僕は思った。
「そんなことないよ。真澄さんを置いて一人で旅に出たりしたんだから」