ビデオが終わると、食い入るように画面を見つめていた真澄が大きな拍手をした。
「すごい、純さん。もう本当に感動しちゃった。西表に連れて行ってくれてありがとう」
「どういたしまして」
 余りにも褒められたので僕は少々照れ臭くなった。
「ねえ、純さん、もう一度再生してくれない?」
 真澄は僕が作ったビデオがひどく気に入ったようだった。
「いいよ」
 僕はすぐにビデオを再生してあげた。真澄は目を輝かせて画面に見入っていた。その様子を見て僕は少し複雑な気分になった。僕は真澄を実際に西表に連れていった訳ではなかった。ただ真澄がやりたいことのリクエストを取り入れてビデオを作っただけだった。しかもビデオの制作はかなりのやっつけ仕事で、僕に言わせればかなりクオリティーの低いできだった。それなのに、なんで真澄はこんなにも喜んでいるのだろうか。僕にはよくわからなかった。だが、ふと気づいた。こんな不出来なビデオでさえ嬉しいくらい真澄が過ごしてきた時間は暗かったのだ。
 相変わらずビデオに心酔している真澄の目が輝けば輝くほど、僕は真澄が哀れに思えてならなかった。できることなら本当に真澄を西表に連れて行ってあげたいと思った。そんな日は永久に来ないことなど分かりきっているというのに。