八月二日(日)

「じゃあ、行ってくるね」
「行ってらっしゃい」
 真澄の声に送られて僕はカラオケボックスに向かった。僕のリュックの中にはノートパソコンと、その他必要な機材が収まっていた。完成するまではビデオの内容を真澄には知られたくなかった。だから、僕はカラオケボックスで作業をすることにしたのだ。
 僕はまずは歌の方を完成させることにした。ノートパソコンへの音符の入力は既に済ませていた。次に必要なのは、入力した音符通りにノートパソコンが再生してくれるメロディーと伴奏に合わせて、僕自身が歌う歌を録音することだった。
 ノートパソコンにマイクとヘッドフォンをつないだ後、僕は壁に歌詞を印字した紙を貼りつけた。ヘッドフォンを被りノートパソコンに接続したマイクを手にして録音の準備が完了した。歌の録音自体にはそれほど時間はかからなかった。五回目には満足のゆく歌が録音できた。
 しかし、その後、歌詞に合わせて写真が変わってゆくようにビデオを編集するのにえらく時間が掛かった。
 結局、僕がカラオケボックスを出たのは夕方近くになってしまった。僕は真澄の待つアパートに帰る前に、少し早めの夕食を取った。
 実は翌日から二泊三日の予定で与那国島に行くことになっていたのに、まだ、ろくに準備をしていなかった。真澄にビデオを見てもらったらすぐに準備にかからなければならかった。