シーカヤックとは何か。言葉だけで説明するのは少々困難だ。だが、おそらく誰もが次のような光景を目にしていることは間違いないだろう。細い船体の真ん中に開いた穴から上半身だけを出した人が、一本の棒の両側に水を掻くブレードが付いたパドルを操り川の急流を下って行く姿だ。普通、人がカヌーと呼ぶこれにはリバーカヤックという名前もある。つまりそれの海版がシーカヤックだ。シーカヤックはリバーカヤックに比べると船体が長い。舵の付いているものといないものがあり、付いている場合は船の中にある左右のペダルを足で踏むことで操舵を行うようになっている。僕がツアーで利用しているのはもっぱら舵付きのものだった。

「なるほど、良く分かったわ。なかなか面白そうな乗り物ね」
「そうだね、いろいろなツアーがあってね。遊覧船では行けないマングローブの森の奥まで行ったり、珊瑚の奇麗な所まで漕いで行ってシュノーケリングをしたりもできるんだ」
「西表、なんか私も行ってみたいな」
 そう呟いて真澄はため息をついた。その次の瞬間、頭に浮かんだ考えを僕はそのまま口にしてしまった。
「連れてってあげようか?」
「え!」