近づくと物凄い速さで砂の中に潜ってしまうカニの大群。水辺近くの岸をおぼつかない足取りで移動するムツゴロウの仲間の魚たち。川面を埋め尽くして流れてゆく白いサガリバナの群れ。岸辺で一斉に鋏を振って手招きをするシオマネキたち。西表の川にはたくさんの興味深い生き物たちがあふれていた。
 陸に目を向ければ、奇麗な緑色をしたキノボリトカゲ、まるで怪獣のようなキシノウエトカゲもいた。 
 海は上も下も美しい色に満ちていた。見たこともないような色の水面、色とりどりの魚たちがカラフルな珊瑚の上を行き交う水中。どちらも正に別世界だ。

 そんな西表の写真の数々を、真澄は目を輝かせて見つめるばかりで何も言ってこなかった。ようやく真澄が口を開いたのはシーカヤックに乗る僕の写真を見た時だった。
「純さん、カヌーにも乗れるの?」
「ああ、それはカヌーの一種なんだけど、シーカヤックっていうんだ」
「シーカヤック?聞いたことないな。どんな物なの?」
 そう聞かれて僕は少し返答に困ったが、なんとか説明をしてあげた。