「ねえ、もし良かったら、その時の話を聞かせてくれないかな?」
 僕は少し迷ったが話すことにした。
 その歌ができたいきさつを誰かに話したことはそれまで一度もなかった。それなのに、前の晩に知り合ったばかりで声しか聞こえない相手に、どうして話す気になったのか自分でも良く分からなかった。でも本当は、いつか誰かにその話を聞いて欲しいとずっと思っていたのかもしれなかった。
「きっかけから話すと、すごく長くなるけどいいかな?」
「うん、聞かせてくれると嬉しい」
 真澄の声からは興味津々の様子が伝わってきた。
「今から三年半前になるかな、僕は高校一年の一月に初めて竹富に行って、あの歌を書いたんだ。でも、あの歌の話をするなら竹富に行った経緯から話すべきだと思うんだ」
 三線をケースに戻すと、僕は覚悟を決めて竹富に行った経緯から真澄に話し始めた。