注文していたパンケーキとカフェオレが来ると、話は、一気に進んだ。
咲斗がパンケーキを頬張る。
「このまま、引きずるなら、夏祭りで、無理矢理、会わせよう。そうすれば、どっちからかは、話せるじゃん」
「そうするか」
それなら、俺達が集まると言えば、無理に断れないだろう。
俺もパンケーキを一口。
キャラメルとホイップの甘さが口の中で広がる。
パンケーキを飲み込むと、今度は、カフェオレを一口。
口の中で微かに残っているキャラメルの甘さがカフェオレのまろやかさと少しの苦さと混ざり合い、なんとも言えない美味しさを奏でている。
「何処かで、二人きりにさせるか」
「だな」
「夏祭りまでは、俺達で、来斗だけでも連れ出そうぜ」
「オッケ」
こうして、作戦会議は、終わった。
後は、デートを楽しむだけだ。
「よし、作戦も決まったし、次は、何処、行く?」
咲斗も同じ事を考えていた。
「買い物でも行くか?」
「行く」
買い物に決定した。
最初に立ち寄ったのは、服屋だった。
咲斗が次々とコーデを決めて、一緒に試着する。
「これも良いと思ったんだけどな。次、着るぞ」
「了解」
元の服に着替えると、咲斗がハンガーを取って、俺と自分に服を合わせる。
「これじゃなくて、あっ、こんな感じのだ。
湊斗、次、これな。俺は、こっちの服、着る」
言われるがまま、試着をする。
「おっ、似合う。さすが、俺」
「咲斗も似合ってる」
「だろ!俺、これ、買おうかな」
「俺も咲斗が選んでくれた、このコーデで買う」
「次、出かける時は、この服な」
「ああ」
服を買って、次にやってきたのは、雑貨屋。
「久しぶりにあれ、やろうぜ」
「あれか。やろう」
服屋の次に雑貨屋に来ると買った服に合わせて、アクセサリーを選んで買っている。
「これは?」
「良いな」
今は、咲斗が俺にネックレスを選んでいる。
「でも、こっちも捨てがたいな」
「悩むなら、一回、着けるけど?」
「いや、俺の勘がこっちだと言っている。こっちだ」
「ありがと。次は、俺の番だな」
俺は、もう、決めていた。
「これだ」
「俺、これにする!」
「気に入ってくれて、良かった」
その後もゲームセンターに行ったり、映画を観たりした。今日は、二人だったからか、いつもより、帰る時間が一時間ほど、押していた。
「あーあ。もう帰らないといけないのか」
「遊園地に行った時も感じたが、二人で居ると時間が経つのが早いな」
「だな」
会話が途切れ、沈黙が流れる。
「咲斗」
「なんだ?」
「何回、喧嘩しても、俺は、咲斗が好きだからな」
「ああ。俺もだよ」
俺達は、手を繋ぐ。
夏期講習が終わるまで、後、二日。
夏祭りまで、一カ月。
俺にやれることをやろう。
次の日と最終日の学校も理斗と来斗は、話すことは無く、そのまま、学校が休みになった。
毎日、俺と咲斗と来斗は、集まって、一緒に過ごした。
海に行ったり、キャンプに行ったり、流星群を観に行きたくて、天体観測にも行った。ここに、理斗が居てくれたらと俺達は、思いながら、八月を過ごしていた。
そして、八月の最終日。夏祭りの日だ。
夏祭りは、理斗が久しぶりに集まれる日でもあった。
夕方、俺は、浴衣を着て、家を出た。
「湊斗」
咲斗が待っていた。もちろん、浴衣を着ている。
俺が紺色で咲斗が赤色だった。
「浴衣、似合ってるぜ」
「咲斗は、かっこいいな」
「サンキュ。行こうぜ」
「ああ」
俺達は、肩を並べて、歩き出す。
突然、咲斗が耳元で囁く。
「ネックレスも似合ってる」
「気づいてたのか」
そう、今日は、咲斗に選んでもらったネックレスを着けていた。
「今、気づいた。首元が少し、光ってたから」
いざ、咲斗が気づいてくれると嬉しいが、少し、恥ずかしかった。
「湊斗、可愛い」
咲斗は、ニカッと笑いながら、俺の顔を覗きこむ。
「...分かってるなら、言うな」
「了解。だけど、その顔、俺だけに見せろよ」
「ああ。咲斗だけにしか見せない」
しばらく、歩いていると神社が見えてきた。
「理斗達、もう、着いてるよな」
「ああ。理斗が来斗を屋台に連れ周してるかもな」
「探しながら、俺達も屋台、周ろうぜ」
神社に入ると人混みで詰め寄っていた。
すると、咲斗が俺の手を取る。
「離すなよ」
「...ああ」
離すかよ。
「何、食べる?」
一瞬、来斗の声が聞こえた。
「湊斗、今」
「ああ、聞こえた。来斗の声だ」
辺りを見渡すが、来斗は見当たらない。
「理斗と一緒に居ると良いけど」
「あっち、探そう」
神社の一番、高い場所まで登る。
「見えるか?」
「何処だ」
「湊斗、咲斗、何してるんだ」
後ろから、理斗の声がした。
振り返ると手を繋いでいる理斗と来斗が居た。
「お前達を探してるんだよ」
と前を向いて、辺りを見渡しながら、自然と返事をする咲斗。
「咲斗、後ろ、見ろ」
「うわっ、理斗、来斗!」
「仲直り、出来たんだな」
「二人のおかげでな」
「ありがとな」
「おおー!良かったな」
「久しぶりに四人で周ろう。俺、夏休み、お前達と遊べなくて、寂しかった」
「理斗が寂しいって言った」
「俺だって、寂しい時だってある」
「俺も寂しかったぜ、理斗」
「来斗は、さっき、聞いただろ」
こうして、集まる事が出来た俺達は、四人で屋台を周る事にした。