理斗と別れた俺達は、ボウリングに来ていた。
「理斗の馬鹿野郎!!」
と言って、来斗は、思いっきり、ボールを投げた。
ボールは、レーンの真ん中をストレートに転がり、ピンを全て、倒した。
「おっ、ストライク」
「こんなんじゃ、足りねえ。二ゲームやったら、カラオケ、行くぞ」
「そうだな。カラオケ、行くか。来斗、思う存分、歌おうぜ」
「ああ、湊斗も良いか?」
「良いぜ。咲斗、次、投げる番だぞ」
「おう」
次は、咲斗が投げる番だ。
「おりゃ」
咲斗がボールを投げる。
勢いは、良かったが、回転がかかり、左側のピンを三本ほど倒して終わった。
「あちゃ、もう少し、右から投げれば良かったな」
「そうだな。後、もう一回、投げれる。頑張れ」
「ああ、サンキュ!」
レーンの準備が出来て、咲斗がボールを持つ。
「もう一回」と言って、ボールを投げる。
次は、真っ直ぐに、ボールが転がるが、レーンの右側を通過。ピンに当たったが、今度は、二本、倒しただけだった。
「あー、今度は、ストレートかよ」
「まあ、惜しかったじゃん」
そして、一時間後、カラオケに来た。
「一曲目、俺、歌う」
「来斗、俺も一緒に歌う!」
いつも通り、咲斗と来斗が二人で歌い始める。
来斗、訳も分からないで、距離、取られてるから、寂しいよな。
俺達が居る時くらいは、気が紛れると良いけど。
「湊斗、曲、入れろ!」
マイクの電源を入れたまま、来斗が言う。
「歌え!」
咲斗が飛び付いてくる。
「分かったよ。今のうちに、ドリンク取ってくるのとポテト、頼んでおいてくれ」
「オッケー」
「じゃあ、俺、ポテト、頼む」
あっという間に、時間が過ぎて、帰り道を歩いていた。
来斗が突然、立ち止まった。
「あっ、理斗からメール、来てる」
「良かったじゃん」
「理斗、なんて?」
来斗から笑みが溢れる。
咲斗が横から来斗のスマホを覗く。
「今、こっちの近くに居るから、まだ、来斗が近くにいるなら、一緒に帰ろ。だって」
「早く、行かないとじゃん」
「そうだな。俺、行ってくる」
「ああ。行ってこい」
「二人共、ありがとな。またな」
「また、明日」
「じゃあな」
走り出した来斗を見送った。
「大丈夫そうだな」
「良かったよ」
心の底から、安心していた。
「俺達も帰ろうぜ」
「ああ」
だけど、次の日、こんな事になるなんて、俺も咲斗も思いもしなかった。
次の日の朝、いつも通り、咲斗と待ち合わせをして、バス停まで歩いて、理斗達と合流した。
でも、理斗達の様子がおかしかった。
「どうしたんだよ」
「何にも無い」
「ああ、いつも通りだ」
二人は、喧嘩をしたらしく、待ち合わせをしたのは、良いものの、お互いの方を見ようとも、話そうともしないのだ。
「昨日、何があったんだ?」
「言わない」
来斗は、言わないの一点張り。
「俺は、悪い事してない」
理斗は、説明をしない。
「とりあえず、学校な。昼に話そうぜ」
と咲斗が言って、この話は、一旦、終わりになった。
だけど、いざ、昼休みになると、理斗と来斗の喧嘩は、再燃した。
「理斗と話す事は無い」
「俺も無いよ」
俺もだったが咲斗もお手上げのよう。
「どうする、湊斗」
俺は、少し、考える。
「とりあえず、二人に別れて、話を聞こう。
お互いの前だから、話せないのかもしれない」
「了解」
「来斗、こっち来い。理斗は、咲斗の方に行け」
「ほら、理斗、二人で話そうぜ」
咲斗が理斗を連れて、屋上を出る。
そして、来斗が俺の隣に座る。
「今は、俺と二人だから、昨日、あった事、話してくれるよな?」
すると、来斗が泣き出した。
「き、のう、理斗にメールしたら、すぐ、返事が来て、居る場所、教えてくれたんだ。だから、俺、急いで、行ったんだ。だけど、その時、同じクラスの女子と俺の事、待ってたんだ」
クラスの女子と待ってたか...。
「俺、行くの怖くなって、やっぱり、一人で帰るって、連絡したんだ。その時は、普通に返事が返ってきたから、安心したんだ。大丈夫だって。だけど、朝、待ち合わせした時、理由、聞かせてって、話したら、今は、何も言えないって、言われた。理斗、俺の事、嫌いになったのかなあ」
俺は、また、考える。
「来斗、俺の話、聞いてくれる?」
その日の放課後、来斗には、すぐ、帰ってもらった。
これは、昼休みが終わる頃に遡る。
「そうか」
俺は、咲斗と二人で、理斗達の話を共有していた。
「何か、考えないとな」
何か、考えていた咲斗がパッと言った。
「それならさ、放課後、二人で出かけようぜ」
「二人で?」
「今日は、来斗も頭、冷やした方が良いと思うんだよな。理斗は、元々、離脱だろ?だったら、二人で出かけて、何か、考えようぜ」
「確かにそうだな」
二人で出かける約束してたけど、中々、予定、合わなかったし、ずっと、四人で集まってたからな。良い機会だと思おう。
急遽、咲斗と二人で出かける事にして、今に至る。
「何処、行く?」
「カフェに行こうぜ。時間はあるからな」
「賛成」
スマホで場所を検索、相談して、人気のカフェに行く事になった。
「久しぶりだな。デート」
「嬉しいな」
俺達は、手を繋ぐ。
「俺達、喧嘩って言う喧嘩した事ないよな」
「ああ。だけど、言い合いは、喧嘩に近いくらいやってるよ」
「何か、思いつくと良いけど」
「まあ、楽しもうぜ」
そして、カフェに着いた。
「学校から近いから、ここにしたけど、人、多いな」
「夏休みだからな」
待っている人は、居ないが、席は、見渡す限り、満席に近かった。
「いらっしゃいませ!お二人様ですか?」
「はい」
「テーブル席、ご案内しますね」
そう言われて、テーブル席に案内される。
「ご注文、決まりましたら、伺いますね」
「はい。ありがとうございます」
俺は、そう言いつつ、咲斗が手を上げた。
「俺、パンケーキとカフェオレで!」
しょうがないな。
「じゃ、俺もカフェオレとパンケーキのホイップとキャラメルソースのトッピングでお願いします」
「はい、かしこまりました」
店員さんが下がると、咲斗が俺に謝った。
「悪い、湊斗、俺、勢いで、注文した」
「良いよ。相談してた時から、食べたいやつ、目星、ついてたから」
「サンキュ」
そして、話題は、本題の話に入る。