観覧車を降りると、理斗達と合流した。
「帰る前に、パレード、行こう」
と来斗が言って、俺達も満場一致。
「あの大通りのところか」
「いいな」
「賛成」
最後に、パレードを観て、帰る事になった。
パレードの場所に着くと、まだ、少し時間があって、観る場所を探していた。
「あっちの方が人、少ないな」
観る場所も時間までに確保して、パレードが始まった。
「理斗、あっちこっち、キラキラしてるぞ」
「はいはい。綺麗だな」
俺と咲斗は、何か話したりはしなかった。
ただ、手を繋いで、パレードを観ていた。
パレードが終わると、遊園地を出て、急いで、電車に乗った。帰りは、椅子に座る事が出来た。
「なんとか、乗れたな」
「ああ」
椅子に座ると、来斗が理斗の肩に頭を預けた。
「ん、俺、寝る」
「駅に着いたら、起きろよ」
理斗の返事に来斗は、答えず、代わりに、寝息が聞こえ始める。
「ったく、ちょっとは、身構えろよ」
と言った理斗は、来斗の頭を撫でる。
「俺も、眠いかも」
「だったら、咲斗も寝ろよ。起こしてやるから」
俺が自分の肩を指さすと、咲斗が頭を預ける。
「ああ、頼む」
そう言って、咲斗は、眠り始めた。
「咲斗が湊斗に肩、預けたら、咲斗の体勢、丁度、良さそうな感じだな」
「ああ。俺の方が、身長、小さいから、咲斗には、丁度、良いんだろ」
「湊斗」
「なんだ」
「俺、夏期講習が終わったら、しばらく、お前達と集まれない」
「何か、あったのか」
「ただの用事。落ち着いたら、また、集まろうぜ。
来斗とも会えないと思うから、その時まで、来斗を頼む」
「ああ。分かった」
そこからは、何も話さないまま、時間が過ぎて、駅に着く。
「俺達、こっちだから」
「じゃあな!」
「ああ」
「またな」
そして、咲斗と二人、帰路に着いた。
理斗が"ただの用事,,だけで、長い期間、集まれないって、初めてだよな。
来斗に、言えないから、俺達にも言えないとしたら、深く、追及するのは、駄目だしな。今日は、何も考えないでおこう。
「どうした?」
俺がずっと、考え込んでいたからか、咲斗が俺の顔を覗き込む。
「夏期講習が終わったら、理斗がしばらく、集まりに来れないらしい。"ただの用事,,だそうだ」
「来斗、寂しがるだろうな」
「ああ。だから、来斗を頼む。だってさ」
すると、咲斗は、少し、考えて、口を開く。
「それは、そうとして。誰かが来れないのも久しぶりだけど、理斗が来れないのも、理由も言わないの、初めてじゃねえか?」
「俺も、さっきまで、考えてた。だけど、理斗が言わないなら、追及しない」
「そうだな」
「いつも通り、集まって、出かけよう。夏祭りまでには、理斗も落ち着くだろ」
「ああ」
あれやこれやと話していると、家に着いた。
「湊斗」
咲斗がぽんっと俺の頭に手を置く。
「余り、考え過ぎるなよ」
「ああ」
俺が返事をすると、今度は、クシャっと頭を撫でる。
「よし。じゃあ、また、明日な」
「また、明日」
そして、一日が終わった。
次の日は、学校で夏期講習。いつも通り、四人で登校して、授業を受けて、昼休みになった。午後からは、文化祭の準備がある。
「俺、もう、行くから」
「理斗、早いな」
「先生に呼ばれてるんだ」
「じゃあ、俺も行く」
「お前、まだ、パン、残ってるだろ。食ってから来い」
「うっ、分かった」
理斗は、珍しく、来斗を待たずに、屋上から降りて行った。
「理斗、俺の事、嫌いになったのかな。最近、距離、とられてる気がする」
「考えすぎだろ。昨日だって、理斗がお前と二人になりたくて、昼も合流しなかったんだからな。後、絶叫が無理なやつが居たからな」
「悪かったよ」
「そうか...そうだよな。考え過ぎだよな」
「ああ。お前達は、大丈夫だ。それより、今日の帰り、何処、行く?」
「ん...ボウリングとか?」
「賛成」
「いいな」
理斗が良いなら、放課後、ボウリングに行く事になった。
ここで、予鈴がなった。昼休みが終わり、クラスに別れて、文化祭の準備を進めていく。
「咲斗、マーカー、取ってくれ」
「了解、えっと、マーカーっと。ほら」
「サンキュー」
俺と咲斗のクラスは、カフェをする予定で、二人で、看板を作っていた。
「外に置くメニューは、黒板が看板になってるやつ、使うんだよな」
「ああ。そっちは、前日に書くらしいから、大丈夫だ」
「分かった」
作業は、あっという間に過ぎて、放課後になった。
「よし、終わった。湊斗、来斗達のところ、行こうぜ」
「ああ」
隣のクラスに行くと、理斗が出てくるところだった。
「悪い、湊斗、咲斗。俺、今日、帰るから、来斗を頼む」
「それは、良いけど、用事、繰り上げになったのか?」
「ああ。そうなんだ。だから、しばらく、一緒に居られないが、夏祭りまでに終わらせる」
「分かった」
「任せろ」
俺と咲斗が頷くと理斗が後ろを振り向く。
「またな、来斗」
「じゃあな」
来斗の声が教室から聞こえてきた。
「頼む」
「ああ」
もう一度、頷くと、理斗は、帰って行った。