僕たちの恋人同盟

恋人同盟は、高校生になった時に、お互いが付き合っている事が分かって、すぐに結成した。
ただ、毎日、一緒に居る。それだけだ。
お互い、幼馴染で恋人がいる。それ以上に何かの名前をつけるなら、なんだろうと話した事から、始まった。
「湊斗、屋上、行こうぜ」
「ああ」
咲斗に呼ばれて、昼休みだと、気づく。咲斗と隣の教室に向かう。
「理斗、来斗」
咲斗が呼んでも返事は無い。
「こっち」
後ろを向くと、理斗と来斗が居た。
「悪い。先生に呼ばれてたんだ。行こう」
「ああ」
昼休みに集まって、購買でパンを買って、屋上で食べるのも俺達の日課だ。
「ラッキーだったな。メロンパンと焼きそばパンが残っているなんてな」
「ああ。チョコパンも残ってたし」
「早く食べろ。次の授業の小テスト、勉強するんだろ」
「そうだった!」と来斗は、急いでパンを詰め込む。
「そんなに詰めたら、詰まるぞ」
「ふあに?」と言った来斗のリスのようになった頬は、すぐに、小さくなった。
「食えるのかよ」
「ああ。食えるよ。理斗、食ったから、勉強、教えてくれ!」
「待て、俺は、まだだ」
後、一口分と言ったところだが、中々、食べようとしない。
「食べれないのか?」
「いや、食べれる」と今度は、理斗が口にパンを押し込んで、コーヒー牛乳を流し込む。
「理斗、それ、俺のだけど」
だけど、理斗が飲んだコーヒー牛乳は、来斗が飲んでいたものだった。
少し、驚いていたが、飲み込んだ後、間髪入れずに言った。
「お前のだったら、なんだって飲むよ」
理斗は、笑った。
だけど、来斗は、顔が赤くなる。
「また、そうやって、お前は、俺をドキドキさせるんだ」
「ああ、そうだよ。来斗、お前が好きだからな。
幾らでもさせてやる」
理斗は、来斗からみれば、爆弾のような言葉を投げ続ける。
「分かったから、追撃、やめろ!
というか、早く、勉強しよ?!」
「来斗、可笑しいな!」
と笑う咲斗に俺も追撃をする事にした。
「咲斗、お前も早く食べるんだ。俺達も小テストだろ」
「そうだな」と言って、咲斗は、コーヒー牛乳を飲む。
「ちなみに、それ、俺のだから」
「えっ?!...湊斗、入れ替えたな!」
「当たり。という訳で、こっちは、俺がもらう」
俺は、咲斗が飲んでいたコーヒー牛乳をすぐに飲み干す。
「あっ、湊斗が全部、飲んだ!」
「大変だな。咲斗も」と言う来斗の隣では、理斗が笑いを堪えていた。
「理斗、笑うな!!」
「フッ...ごめん、無理」
こうして、昼休みは、勉強会になり、過ぎていった。
放課後になって、帰り支度をする。
「湊斗、今日は、どこ行く?」
咲斗が早々に帰り支度を済ませて、俺の隣に座る。
「カラオケとか?」
「ゲームセンターもあり」
「とりあえず、合流しよう」
「ああ」
教室から出ようとした時、理斗と来斗が来た。
「遅いから、迎えに来た」
「サンキュ」と咲斗が手を振る。
「行こう」
「ああ」
そして、四人で、学校を出る。
「カラオケ、行く?」
来斗が言った。
「賛成」
「右に同じ」
「左に同じ」
大体、こうやって、行き先が決まる。
学校から、話しながら歩いていると、あっという間に、カラオケに着いた。
「よし、歌うぞ!」
「俺も歌う!」
マイクとタブレットに飛びつき、咲斗と来斗が二人で、歌い始める。
「まず、ポテトを頼め」と言って、理斗は部屋に付いている電話で注文を始めた。
「俺、ドリンク取ってくる」
咲斗と来斗は、歌うのに夢中だ。
注文をしていた理斗が、軽く、手を上げた。
大丈夫という事だろう。
ドリンクを取って、帰って来ると、今度は、理斗が来斗と一緒に歌っていた。
「みーなと」と咲斗が俺に抱きつく。
...可愛いな。
「次、二人で歌おうぜ」
「ああ。曲は、咲斗に任せる」
「やった!」と咲斗は、また、タブレットに飛びつく。
「可愛いな」
今度は、口に出ていた。
咲斗が肩をビクッとした時、少しだけ、しまったと思った。
「湊斗」
「何?」
「...俺は、可愛いのか?」
「ああ。可愛い」
「朝の仕返しではないよな?」
「ああ。今の咲斗を見て、可愛いと思っただけだ」
「俺、可愛いのか...」
今の可愛いの連呼は、良くなかったか。
可愛いのは、本当なんだけど...。
まあ、良いか。この際だから、言っておこう。
「咲斗、こっち」と俺は、咲斗を手招き。
「ん?」
咲斗が近くに来ると、俺は、咲斗を引き寄せる。
「うわぁ」
「黙って聞け」
俺は、ただ、一方的にそう言って、咲斗の耳元に顔を寄せる。
「言っとくけど、俺は、今日の朝、お前に寝癖を直してもらった時、ドキドキしてた。ちゃんと、咲斗は、かっこいいよ」
咲斗は、恥ずかしかったのか、俺が顔を覗き込もうとすると、パッと腕で顔を隠してしまった。
だけど、その後、最高の一言を返してくれた。
「湊斗、好きだ」
「知ってる。...俺も好き」
すると、歌い終わった理斗と来斗が俺達に声をかけた。
「おーい。次、二人の番だぞ」
「湊斗、咲斗に何、言ったんだ?
ずっと、顔隠してるけど」
「可愛いって連呼したら、落ち込んだから、咲斗は、かっこいいって言っただけ」
「そうだな」と気づけば、咲斗が腕を下げていた。
まだ、少し、顔は赤い。
「歌おうぜ」
「ああ」
俺は、咲斗が好きなんだ。
その事実を深く思いながら、咲斗と歌を歌った。