父からの祝福の言葉を受け、私は嬉しくて
急いで父の言伝を彼に伝えようと駆け出した
こんな気持ちは初めてで、嬉しさを体で表現したいくらいだ
けど、それ以上に父から祝いの言葉をくれたのが一番嬉しかった
彼の元へと足を運ぶと、城は少し緊迫した空気だったが気にせずに足へと踏み入れた
彼は私に気づくと、ゆっくり微笑んでくれた
けれどいつもとは違う雰囲気に、違和感を感じた
何か邪魔をしてしまったのかと思い、少し怖気付いてしまう
『あの…私お邪魔してしまったかしら
当然の訪問でごめんなさい
日を改めたほうがいいかしら…』
『いいえ、そんなことありませんよ
姫に会えることは私にとって幸せなこと
一分一秒でも長くいたいくらいです』
私は彼のときめく言葉に、微笑む
それに答えるように、彼は私の髪に口づけを落とす
もう隠す必要はなくなった
あの顔を覆うヴェールも、肌や髪に染粉を塗ることもやめた
あの事件のせいで、叔父によってヴェールと手袋は使い物にならなくなってしまった
彼が私に初めてくれた贈り物なのに、と
物をずっと大切にしているので、大事なのものが無惨な姿で手元に返ってきた時はとても悲しかった
そんな心情を知ってなのか、彼は贈り物と言葉をくれた
『そんなに大事にしてくれて私も
この子達も喜んでいますよ
そして、これは区切りではないでしょうか?』
『区切り…ですか?』
小さく頷き、彼は私の髪を一房手に取り告げる
『新たな自分を、周りに見てもらう為の
その為に、この子達はそうなる運命だった
物にも役割はあります、この子達は役割を
果たしたに過ぎないのです
そう考えられませんか?』
彼の考え方がとても素敵で、私は嬉しかった
けれど、私にとって宝物だったものとお別れするのはとても寂しくて、中々決断ができない
悲しくて涙が出てきそうになった時、彼は私に新しい贈り物をくれた
『姫、泣かないで。これを』
王子は、私の髪に飾りをつけてくれた
オレンジ色の綺麗に花を咲かせたガーベラ
自分の髪色と合っていて、それが自身を引き立たせて
いるかのよう
『やっぱり、とても似合っていますよ
花の一つ一つ、素敵な花言葉が込められています
色によって異なりますが
姫にはとてもこの花がしっくりきますね』
『なんていう、花言葉なのですか?』
『前向き、常に前進
そして、あなたは私の輝く太陽』
『とても、素敵な言葉ですね
私には勿体ないくらい…』
その言葉に、彼は首を振り私の言葉を、違いますよ
と言い、私の頬を撫でる
『私にとって貴女は勿体ないと、そう思ってしまう
けれど、今更手離すことはできないのです
貴女は私の輝く太陽、求めずにはいられません』
そして、彼は私の瞳を見つめ口付けをしようと
瞳で意思を伝えている
『私も、貴方を離すことはできないです
この気持ちを、恋を、愛を知ってしまった以上
貴方を愛することしかできません』
そして彼に抱きつくようにして、自分から口付けをした
けれど、彼はしっかりと私を抱き止めてくれて
口付けも軽く触れるものから、欲情のある口づけへと
変わっていった
あの事件がきっかけで、国中が私の容姿について知れ渡ってしまったらしい
醜い容姿は偽りだったと
この緊迫した空気もおそらく、あの事件が原因なのかもしれない
首謀者が彼の父、それも王様だから
民も混乱していることだろう
国を統べる王が、隣国の姫に危害を加えた
国中を揺るがすことは、間違いない
その事について、以前彼から意見を委ねられた
私はこの人達をどうしたいのかと
被害者である私だからこそ、決める権利があると
私は争いを好まないし、大罪を犯した方々を
どうすればいいのかもわからない
けれど罪を償わず、表に出すのもよくない
彼らに与える罰は、どうしたらいいのだろう
今私の中では結論は出ないが、彼らと対話をする事で
何かが変わると思い、私は彼に進言する
それを彼に伝えると、渋々だったが了承してくれた
彼の付き添いのもとで
彼らが捕えられている牢は、薄暗居場所だった
私が誘拐された場所よりも酷い場所
小さな蝋燭の灯りだけが、頼りだった
少しの隙間風がこの牢を肌寒くさせていた
彼が立ち止まるとそこには、彼らがいた
私が来た事に驚きもせずに、ただ無表情で見つめるのみ
様子を伺っているようにも見えた
私はゆっくりと深呼吸をして、対話を試みた
『単刀直入に聞きます 何故私を誘拐したの
ですか?』
王はゆっくりと、掠れたような声で言い放つ
その声音は憎悪も含まれているよう
『お前は王子に相応しくないからだ
肩書きと容姿は大事だ
そこに愛というものはいらない
私がかつてそうだったように
王子にもそれが必要だ』
自分がそうだったように、息子にもそれが当然のように言い張る
『お義母様についても、それだけで決めたのですか?
とても可哀想です
貴方に愛されることを夢を見て、一生支えることを
覚悟して嫁いだのに、貴方は騙したかのように
お義母様の一生を貰ったようなものなのですよ?』
お義母様の過去の話を聞いて、私は王に申し入れたかった
まるで、囚われの身のような人生だと思ったから
幸せを夢見て嫁いだのに、愛すことはないと
拒絶されるなんて、耐え切れることではない
『…王妃には言ってある
それでもあいつは離縁という選択もしなかった』
『それは言い訳にすぎません、貴方は人の情という
ものがないのですか?』
心当たりがあるのか、お義母様についてはもうそれっきり言葉を発しなくなった
『貴方の言い分は疑問しか浮かびません
王とは言え、それを従わなくてはいけない
その必要性、権利はないと思います
貴方がそうであったとしても
彼にもそうする必要がどこにありますか?』
思ったことを言葉にしただけだが、それが癪に触ったのか、王は声を張り上げた
『知ったような口を聞くな!
今まで容姿を隠してたようなお前なんかに!
どうせそれも王子を自分のものにしようと
いう策略なのだろう?
私は騙されないぞ!』
王の声が薄暗い牢に反響する
小さな蝋燭の灯りが、ゆらゆらと揺らめいている
私はその声に動揺せずに、真っ直ぐに王を見つめる
『あなたが私をどう思おうと構いません
確かに私はあなたに、私と彼の婚姻を
認めてもらいたかった
その為に、容姿を偽ったのは謝罪します
けれどそれは私と彼で決めたことです』
一呼吸置いて私は、当時の思いを
物語るように
『私は、容姿だけで認められたくなかった
私自身を見て欲しかったから
偽ったのです
けれどあなたは、私自身、言葉を
受け入れることはなかった
全てを否定しましたよね』
『…』
『人は一人一人、心、意思を持っている
それが人としての素晴らしい生命です
価値があります 容姿、肩書きだけが
全てじゃない
それをあなたに理解してほしかった
王としてではなく、彼の父として』
そう彼女は、彼の父として認めてほしかった
だから、容姿は偽りだったとしても
心、言葉は真実であった
けれど彼女の言葉は、彼の父の心には届くことはなかった
冷たい牢の空気が私の心に凍てつかせるようで心が少しずつ痛み出して、結局彼らの処遇の答えは出なかった
けど彼はゆっくりと私の気持ちを汲み取るように、抱きしめてくれて
『大丈夫です、貴女はよくやりましたよ
姫には私がついていますよ』
いつもならその言葉が胸を温かくするのに、
今の私の心にはその温かさは届かなかった
何をすべきかわかったが、それを実行するには彼に頼るしかなかった
彼に頼ると嬉しそうに微笑んだ
私に頼られたことが、とても嬉しいらしい
私が実行しようとしていることは、きっと他人の目で見たら、甘いと言われるだろう
けれど、その結果何か得られて、変われるなら
私はそれが一番いい
誰か悪いことをしてしまい、その人を正すという名目で受ける罰
罰には代償が必要
だけどその代償は、人によっては悲しみに溢れるものであるのかもしれない
容姿や肩書きしか見ない、彼の父には
きっと今まで見ようともしなかったものを、
与えることで変われると思う
人々が集まる中で、彼の父は罰を与えられる
民は、見守るように見る人や、暴言を吐いたりなど様々だ
私と彼が姿を現すと、その場が静寂に包まれた
深く民に礼をして、罪状を読み上げる
皆、信じられない表情で私たちを見ていた
『王よ、私は貴方の、王としての権限を
全て剥奪します
そして、貧困の村に移住してもらいます』
王は憎たらしい目で、私を睨みつけていた
きっとこの人は、一思いに殺して欲しかったのだろう
けれど、その願いは叶えてあげない
『貧困の村で監視のもと、貴方に知って
欲しいのです
人の素晴らしさを 支え合う心の強さを
それが私が貴方に求める罰です』
王は、何も言わずに後日、貧困の村へと送られた
王という立場であっても、彼はきっと人に触れる機会がなかったのだと思う
書類上に記載されている内容を見るだけで
その場を見たわけではない
だから、その場所を自ら経験し触れることで
きっと理解し合える
人は理解することで、変われるのだから
私は王が乗った馬車を、見えなくなるまで見送り続けた
『大丈夫ですよ、きっとわかってくれます
私が貴女に惹かれたのと同じように
きっと』
彼の手は力強く、支えてくれた
私はその手を守られるだけではなくて、同じような立場で支え合うような関係を作っていきたい
貧困の村へと移住し、1ヶ月が過ぎた
最初は何故このような場所へと不満はあったが、貧困の者たちと暮らして理解できたことがある
生きる為には食事が必要だ
その食事は、民の一人一人の苦労と汗で
できているのだと
城にいた頃は、三食食事がつく
けれどここでは、作物次第で決まってくる
1食だけで1日を満たすのが日常で
余裕があれば2食だそうだ
飢えることは日常茶飯事
私はこんな大事なことを忘れてしまっていたのだ
作物を育てる民がいるからこそ、国が成り立つ
民に安心して暮らしてもらう為に、王は彼らに貢献し、援助しなくてはならない
そんな大事なことを、ここにきて知った
王を剥奪されて知ることになるとは、思いもよらなかった
かつて、自分も民に寄り添おうと努力した
けれどそれは上手くいかず、私は逃げ出したのだ
『私は…間違っていた
これは私が…目を背け続けていた罰だ』
今ならわかる、あの娘の言葉を
これを伝えようとしていたのだ
あの時の自分を恥じた 娘は私にこれを伝えようとしていたのだ
それを私は身に沁みて、知った
謝罪をしたい
謝罪をして、感謝の言葉を
そして虫が良い話かもしれないが、私ができなかったことを、叶えて欲しい
民に寄り添える、王でありたい
王として、民としてではなく
一人の人間として寄り添え合える存在に
急いで父の言伝を彼に伝えようと駆け出した
こんな気持ちは初めてで、嬉しさを体で表現したいくらいだ
けど、それ以上に父から祝いの言葉をくれたのが一番嬉しかった
彼の元へと足を運ぶと、城は少し緊迫した空気だったが気にせずに足へと踏み入れた
彼は私に気づくと、ゆっくり微笑んでくれた
けれどいつもとは違う雰囲気に、違和感を感じた
何か邪魔をしてしまったのかと思い、少し怖気付いてしまう
『あの…私お邪魔してしまったかしら
当然の訪問でごめんなさい
日を改めたほうがいいかしら…』
『いいえ、そんなことありませんよ
姫に会えることは私にとって幸せなこと
一分一秒でも長くいたいくらいです』
私は彼のときめく言葉に、微笑む
それに答えるように、彼は私の髪に口づけを落とす
もう隠す必要はなくなった
あの顔を覆うヴェールも、肌や髪に染粉を塗ることもやめた
あの事件のせいで、叔父によってヴェールと手袋は使い物にならなくなってしまった
彼が私に初めてくれた贈り物なのに、と
物をずっと大切にしているので、大事なのものが無惨な姿で手元に返ってきた時はとても悲しかった
そんな心情を知ってなのか、彼は贈り物と言葉をくれた
『そんなに大事にしてくれて私も
この子達も喜んでいますよ
そして、これは区切りではないでしょうか?』
『区切り…ですか?』
小さく頷き、彼は私の髪を一房手に取り告げる
『新たな自分を、周りに見てもらう為の
その為に、この子達はそうなる運命だった
物にも役割はあります、この子達は役割を
果たしたに過ぎないのです
そう考えられませんか?』
彼の考え方がとても素敵で、私は嬉しかった
けれど、私にとって宝物だったものとお別れするのはとても寂しくて、中々決断ができない
悲しくて涙が出てきそうになった時、彼は私に新しい贈り物をくれた
『姫、泣かないで。これを』
王子は、私の髪に飾りをつけてくれた
オレンジ色の綺麗に花を咲かせたガーベラ
自分の髪色と合っていて、それが自身を引き立たせて
いるかのよう
『やっぱり、とても似合っていますよ
花の一つ一つ、素敵な花言葉が込められています
色によって異なりますが
姫にはとてもこの花がしっくりきますね』
『なんていう、花言葉なのですか?』
『前向き、常に前進
そして、あなたは私の輝く太陽』
『とても、素敵な言葉ですね
私には勿体ないくらい…』
その言葉に、彼は首を振り私の言葉を、違いますよ
と言い、私の頬を撫でる
『私にとって貴女は勿体ないと、そう思ってしまう
けれど、今更手離すことはできないのです
貴女は私の輝く太陽、求めずにはいられません』
そして、彼は私の瞳を見つめ口付けをしようと
瞳で意思を伝えている
『私も、貴方を離すことはできないです
この気持ちを、恋を、愛を知ってしまった以上
貴方を愛することしかできません』
そして彼に抱きつくようにして、自分から口付けをした
けれど、彼はしっかりと私を抱き止めてくれて
口付けも軽く触れるものから、欲情のある口づけへと
変わっていった
あの事件がきっかけで、国中が私の容姿について知れ渡ってしまったらしい
醜い容姿は偽りだったと
この緊迫した空気もおそらく、あの事件が原因なのかもしれない
首謀者が彼の父、それも王様だから
民も混乱していることだろう
国を統べる王が、隣国の姫に危害を加えた
国中を揺るがすことは、間違いない
その事について、以前彼から意見を委ねられた
私はこの人達をどうしたいのかと
被害者である私だからこそ、決める権利があると
私は争いを好まないし、大罪を犯した方々を
どうすればいいのかもわからない
けれど罪を償わず、表に出すのもよくない
彼らに与える罰は、どうしたらいいのだろう
今私の中では結論は出ないが、彼らと対話をする事で
何かが変わると思い、私は彼に進言する
それを彼に伝えると、渋々だったが了承してくれた
彼の付き添いのもとで
彼らが捕えられている牢は、薄暗居場所だった
私が誘拐された場所よりも酷い場所
小さな蝋燭の灯りだけが、頼りだった
少しの隙間風がこの牢を肌寒くさせていた
彼が立ち止まるとそこには、彼らがいた
私が来た事に驚きもせずに、ただ無表情で見つめるのみ
様子を伺っているようにも見えた
私はゆっくりと深呼吸をして、対話を試みた
『単刀直入に聞きます 何故私を誘拐したの
ですか?』
王はゆっくりと、掠れたような声で言い放つ
その声音は憎悪も含まれているよう
『お前は王子に相応しくないからだ
肩書きと容姿は大事だ
そこに愛というものはいらない
私がかつてそうだったように
王子にもそれが必要だ』
自分がそうだったように、息子にもそれが当然のように言い張る
『お義母様についても、それだけで決めたのですか?
とても可哀想です
貴方に愛されることを夢を見て、一生支えることを
覚悟して嫁いだのに、貴方は騙したかのように
お義母様の一生を貰ったようなものなのですよ?』
お義母様の過去の話を聞いて、私は王に申し入れたかった
まるで、囚われの身のような人生だと思ったから
幸せを夢見て嫁いだのに、愛すことはないと
拒絶されるなんて、耐え切れることではない
『…王妃には言ってある
それでもあいつは離縁という選択もしなかった』
『それは言い訳にすぎません、貴方は人の情という
ものがないのですか?』
心当たりがあるのか、お義母様についてはもうそれっきり言葉を発しなくなった
『貴方の言い分は疑問しか浮かびません
王とは言え、それを従わなくてはいけない
その必要性、権利はないと思います
貴方がそうであったとしても
彼にもそうする必要がどこにありますか?』
思ったことを言葉にしただけだが、それが癪に触ったのか、王は声を張り上げた
『知ったような口を聞くな!
今まで容姿を隠してたようなお前なんかに!
どうせそれも王子を自分のものにしようと
いう策略なのだろう?
私は騙されないぞ!』
王の声が薄暗い牢に反響する
小さな蝋燭の灯りが、ゆらゆらと揺らめいている
私はその声に動揺せずに、真っ直ぐに王を見つめる
『あなたが私をどう思おうと構いません
確かに私はあなたに、私と彼の婚姻を
認めてもらいたかった
その為に、容姿を偽ったのは謝罪します
けれどそれは私と彼で決めたことです』
一呼吸置いて私は、当時の思いを
物語るように
『私は、容姿だけで認められたくなかった
私自身を見て欲しかったから
偽ったのです
けれどあなたは、私自身、言葉を
受け入れることはなかった
全てを否定しましたよね』
『…』
『人は一人一人、心、意思を持っている
それが人としての素晴らしい生命です
価値があります 容姿、肩書きだけが
全てじゃない
それをあなたに理解してほしかった
王としてではなく、彼の父として』
そう彼女は、彼の父として認めてほしかった
だから、容姿は偽りだったとしても
心、言葉は真実であった
けれど彼女の言葉は、彼の父の心には届くことはなかった
冷たい牢の空気が私の心に凍てつかせるようで心が少しずつ痛み出して、結局彼らの処遇の答えは出なかった
けど彼はゆっくりと私の気持ちを汲み取るように、抱きしめてくれて
『大丈夫です、貴女はよくやりましたよ
姫には私がついていますよ』
いつもならその言葉が胸を温かくするのに、
今の私の心にはその温かさは届かなかった
何をすべきかわかったが、それを実行するには彼に頼るしかなかった
彼に頼ると嬉しそうに微笑んだ
私に頼られたことが、とても嬉しいらしい
私が実行しようとしていることは、きっと他人の目で見たら、甘いと言われるだろう
けれど、その結果何か得られて、変われるなら
私はそれが一番いい
誰か悪いことをしてしまい、その人を正すという名目で受ける罰
罰には代償が必要
だけどその代償は、人によっては悲しみに溢れるものであるのかもしれない
容姿や肩書きしか見ない、彼の父には
きっと今まで見ようともしなかったものを、
与えることで変われると思う
人々が集まる中で、彼の父は罰を与えられる
民は、見守るように見る人や、暴言を吐いたりなど様々だ
私と彼が姿を現すと、その場が静寂に包まれた
深く民に礼をして、罪状を読み上げる
皆、信じられない表情で私たちを見ていた
『王よ、私は貴方の、王としての権限を
全て剥奪します
そして、貧困の村に移住してもらいます』
王は憎たらしい目で、私を睨みつけていた
きっとこの人は、一思いに殺して欲しかったのだろう
けれど、その願いは叶えてあげない
『貧困の村で監視のもと、貴方に知って
欲しいのです
人の素晴らしさを 支え合う心の強さを
それが私が貴方に求める罰です』
王は、何も言わずに後日、貧困の村へと送られた
王という立場であっても、彼はきっと人に触れる機会がなかったのだと思う
書類上に記載されている内容を見るだけで
その場を見たわけではない
だから、その場所を自ら経験し触れることで
きっと理解し合える
人は理解することで、変われるのだから
私は王が乗った馬車を、見えなくなるまで見送り続けた
『大丈夫ですよ、きっとわかってくれます
私が貴女に惹かれたのと同じように
きっと』
彼の手は力強く、支えてくれた
私はその手を守られるだけではなくて、同じような立場で支え合うような関係を作っていきたい
貧困の村へと移住し、1ヶ月が過ぎた
最初は何故このような場所へと不満はあったが、貧困の者たちと暮らして理解できたことがある
生きる為には食事が必要だ
その食事は、民の一人一人の苦労と汗で
できているのだと
城にいた頃は、三食食事がつく
けれどここでは、作物次第で決まってくる
1食だけで1日を満たすのが日常で
余裕があれば2食だそうだ
飢えることは日常茶飯事
私はこんな大事なことを忘れてしまっていたのだ
作物を育てる民がいるからこそ、国が成り立つ
民に安心して暮らしてもらう為に、王は彼らに貢献し、援助しなくてはならない
そんな大事なことを、ここにきて知った
王を剥奪されて知ることになるとは、思いもよらなかった
かつて、自分も民に寄り添おうと努力した
けれどそれは上手くいかず、私は逃げ出したのだ
『私は…間違っていた
これは私が…目を背け続けていた罰だ』
今ならわかる、あの娘の言葉を
これを伝えようとしていたのだ
あの時の自分を恥じた 娘は私にこれを伝えようとしていたのだ
それを私は身に沁みて、知った
謝罪をしたい
謝罪をして、感謝の言葉を
そして虫が良い話かもしれないが、私ができなかったことを、叶えて欲しい
民に寄り添える、王でありたい
王として、民としてではなく
一人の人間として寄り添え合える存在に