一輝の右手を握る。秋風は冷たくて、かなり指先を冷やしていた。
いや、一輝の元々の温度感だったのかもしれない。

今日、木本くんに交際の事実を伝える事。かなり、緊張していた。
あんな感じ
手汗がビッショリで、ああ、あの時、緊張してたんだと今になって分かる。

木本くんがよい反応をしてくれたから、緊張はほぐれた。

「一輝は、俺が前みたいにいろんな女の子にふらふら行くように見えてる?」

「…いや?そういえば、前みたいに彼女とっかえひっかえしてないな」

「いや語弊があるな。とっかえひっかえはしてないよ。…じゃなくて、」
失礼な物言いにズッコケそうになる。

確かにあの時の俺はそう見られても仕方ない。最低で最悪だ。ガキで、全部周りのせいにして生きてた。


「俺は、一輝だから一緒にいるんだよ。うまく言えないけど、一輝が俺に関わってくれたから自分の答えを出せる、自分で自分の責任を取ろうと思えたんだよ。この経験が、一輝がくれた言葉が俺を守ったんだよ」

「……なんか照れるわ」

「俺は、高校生の文化祭当日に飛ぶような無責任バカみたいなことはしない。だから、一輝は俺のこの言葉、お守りにして、頑張ってよ」

「お前、変わったな」

「一輝のせいだよ」

「せめておかげっていえよ」
そうやって笑いながら、俺の手を握り返した。まだ、冷たいそれを温めるために、俺のダッフルコートのポケットに突っ込んだ。

俺は、空いてる手でマフラーを巻き直しながら、
オレンジが、濃紺に侵食されていく空を見ていた。