「看板取り付けまーす」

脚立に登って、俺たちが色付けした紙を貼り付けたベニヤ板を校門に立てかける。

チープさこそが文化祭の醍醐味なのだと言うけど、いざ自分たちが作ったものだと思うとチープどころか最高級に見える。
あそこ、色ムラがあるとか、微妙に角度がズレたレタリングとか。
全部また燃やすのに、そこに費やした時間はかけがえなかったと信じれる。


「文化祭実行委員集まってー。写真撮りまーす」

賑やかにやんややんやと集まる委員たち。
はじめはやりたくなかったとぼやいていた人たちも、
やる気に満ち溢れたあの人たちみんな横一列に並ぶ。
カシャリ、と2回シャッター音を聞いてからすぐに

俺はさっき看板取り付けの瞬間までいた田島くんを探していた。

「若王子くーん!うちらとも写真とろ〜!」
「分かった」
女子の実行委員たちの構えるスマホに映り込んだ。多分きれいに撮れていると信じて足早にその場を抜ける。


看板を、空き教室から運び出すまでは一緒にいたのに、
いざ撮影になったとたん、俺の隣から姿を消したのだ。

高校にあるシンボルツリーの裏、謎の池の中、中庭。

どこを探しても見つからない。

というか、田島くんが写真撮影で姿を消すタイプには思えない。集合写真では絶対、みんなの前で寝そべって写真を撮るタイプだと思ってた。

もしかして、体調が悪いのかも。

「待って。ていうか、なんで俺が田島くん探してんの…?」

速歩きで校内を動き回った。上がる息と一緒に出た言葉に対して自分でも答えを見つけられなかった。

いや
なんでって、一緒に準備した仲だから?
せっかく記念撮影ならついでにスマホで写真撮って、写真送るから、なんて理由で連絡先交換できるじゃんか。


これ、今まで俺が女子にされてきた連絡先交換のための常套手段だと気がついた。