始業式が終わって、文化祭までの期間は、準備する時間を学校が与えてくれた。

俺たちが命をかけて折りたたんだパンフレットも、HRで配布された。

田島くんに目配せしてみるけど、
田島くんはただ、パンフレットを眺めていた。


結局、連絡先が聞けないまま、夏休みが終わってしまった。

夏休み前まであった女の子に囲われた俺と、
窓ガラスをバックに大きな口を開けて笑う田島くん。

本当に、夏休みだけの
一時的な関係性だったんだということを象徴する風景が目の前に広がる。

最初から、そういう関係性を願っていたのは俺なのに、いざ本当にそうなるとさみしい。

心に風が吹き込むたび、寒さがあった。
まだ蝉が泣き止まない9月なのに。


「田島くんは、この衣装。若王子くんはこの衣装」

クラス委員の女子から紙袋を渡される。中身を見て、すぐ見なかったことにした。

「うわ、俺、王子様?まじ?着たことないねん」

いやそれはだいたいの人がそうだろ。と内心突っ込む。

「若王子くんは?」

ようやく話しかけてもらえて、口元が緩みそうになるのを抑えた。

「お姫様だった」

中身がすごいものだったけど、それより、田島くんの声の方が、ショックよりも嬉しいが勝つ感覚がした。

「まじ?じゃあ俺らペアやんな」

お互いを指差しながら笑ってすぐにまた前を向いた。

なんか、素っ気ない気がする。

夏休み中なら、俺にガツガツ関わってきていた気がするのに。
俺はそんなこと思っても、どうすればいいかは分からないからまた曖昧に笑った。

まさか俺がお姫様(金髪、ピンクのフリフリドレス)を着るだなんて。むしろ田島くんと逆じゃね?とすら思う。

そんな話をしたくても、田島くんはもう西の端の男子と話をしていて、俺は俺で女の子に囲まれてて、何もできなかった。

また、放課後、最終準備で話せばいいや。なんて何日も寝かしてしまうほど、俺は彼と仲良くなってたつもりだった。