「田島 一輝くん。
明るくって声がデカい、誰とでも話ができる明るい子。ちょっとだけガサツで、ちょっとだけバカ。俺を散々振り回してくれる。優しい人」

本当は、仕事ができて、冷静さもあって、意外と嘘つきで秘密主義という部分もあるのを知っているよ。

でも、なぜか言うのが惜しくて、また今度聞かれたときに、その事を言おうと思った。

田島くんは、アッハッハと声を出して笑った。

「まだまだやな。若王子くん。俺に対して認識が甘い!…でも、それでええよ。それがいい。お前の中の俺がそうあれたら、満足!」

ガシャン、とチェーンが揺れて、田島くんが離れていく。

また、隣のブランコに腰掛けて、揺られ出した。

「あーあ、花火、もうそろ終わりかな?」

「うーん。もうちょいかな?」

田島くんは、がさがさと袋からゲソ天を取り出して、齧りついた。

「…あ、いる?はい、あーん」

「齧ったやつはいいかな…」

俺に齧ったゲソ天を差し出して、すぐにまた口元に運ぶ。

「彼女と食べさせあいとかした?」

「さあ、どうだろ」

「花火上がったタイミングでチューとかした?」

「さあ、ね」

「あーあ、若王子くんの17歳の夏、俺が奪っちゃったなー」
キャー、と甲高い声で茶化す口元にはソースがたっぷり付いていた。
そうやって、予想外の言葉と行動で、俺を振り回してくれる。

でも、多分俺が自ら振り回されにいってるのかもしれない。

今まで相手の顔を見て、欲しい言葉と行動をあげた。
田島くんは、何が欲しいのか、どうすればいいのか、
俺の経験値の中に答えなんかなかった。

ずっとなんとなく、周りの答えに合わせて生きてきたのに、田島くんのペースになると、自分で答えを出している気がした。

田島くんがいないと、今、ここでブランコに揺られている俺はいなかった。

夏休みにジュースじゃんけんなんか、小学生がする遊びなんか楽しみにしてないし。

「俺も、初めて女の子以外と夏祭り一緒に来たし。
田島くんの17歳の夏、俺のもんだよ」