「看板取り付けまーす」

脚立に登って、俺たちが色付けした紙を貼り付けたベニヤ板を校門に立てかける。

チープさこそが文化祭の醍醐味なのだと言うけど、いざ自分たちが作ったものだと思うとチープどころか最高級に見える。

「文化祭実行委員集まってー。写真撮りまーす」

賑やかにやんややんやと集まる委員たち。
はじめはやりたくなかったとぼやいていた人たちも、
やる気に満ち溢れたあの人たちみんな横一列に並ぶ。
カシャリ、と2回シャッター音を聞いてからすぐに

俺はさっきまでいた田島を探していた。

「若王子くーん!うちらとも写真とろ〜!」
「ごめん!また後で!」


看板を、空き教室から運び出すまでは一緒にいたのに、
いざ撮影になったとたん、俺の隣から姿を消したのだ。


高校にあるシンボルツリーの裏、謎の池の中、中庭。

どこを探しても見つからない。

というか、田島くんが写真撮影で姿を消すタイプには思えない。集合写真では絶対、みんなの前で寝そべって写真を撮るタイプだと信じている。

もしかして、体調がわるいのか。

「待って。ていうか、なんで俺が田島くん探してんの…?」

速歩きで校内を動き回った。上がる息と一緒に出た言葉に対して自分でも答えを見つけられなかった。