肘が当たりそうになるたび、なぜか身をすくめた。
なんとなく俺だけじゃない、田島くんも避けているような気がした。
でもうちわを扇ぎ続ける田島くんの側にいないと、風を受けられないし。

そう言い訳しながら、会場に近づいていく。

浴衣の人が、視界の中に増えていく。
ああ、ずっと俺の隣には浴衣の女の子がいたな。
モヤがかかったかのように思い出せない顔。
本当に最低な事をしていたと思う。

ずっと女の子が好きなシチュエーションを、言葉をあげれば満足するだろうと考えて与えていたつもりだった。
そこに、自分の好きとか、嫌いとかそんなのは存在してなかった。

今日、田島くんと花火が見られたら、連絡先、聞いてもいいのかな。

そう思える程には、彼の事を気にしている自分がいた。




「屋台とか、小学生ぶりや。冷やしきゅうりと箸巻きあるかな」

「なにそれ」

「え、これ地域差ある感じのやつ?」

「わかんない」

他愛もない会話しながら、街灯が一つ、また一つと
道路を照らした。

花火大会、始まらなくて、ずっとこの道中が続くのも悪くないと感じるくらい、ゆったりした時間が流れていた。