「…よし、ほな仕事しよか」

また、いつもみたいに俺に向ける顔は、やっぱり木本くんに向けるそれよりも優しい。
それが、まだ関係性が浅い証拠だった。

「うん」

でも、一ヶ月後なんかで埋められるわけでもないから
俺もまたいつもみたいに、田島くんが言うほんまの笑顔なんかじゃない笑顔で笑った。

また、静かになった教室に、紙が擦れる音が続く。


絶対、この量が1日で終わらないって気がついたのは、外がまだ明るいけど、日が傾いてきた気配がする18時半だった。


「あ~あ、俺が先生に呼ばれんかったら作業終わってたのにな」

「いや、多分むりだったよ」

「残り、どうする?いつやる?」

「うーん、明後日とか?1回、作業について忘れたい。トラウマになるわ」

永遠に終わりが来ないんじゃないかと思った作業も2/3は終わった。途中からロボになって、感情を失って手だけが動く感覚があった。一旦仕事から離れたい。

「俺ももう止めたい。今日はもう帰ろ」


二人して、伸びをした。