2人で、ベンチに横並びに座る。
プラスチック製の、スポーツドリンクの名前が記されたそれは、かなり昔からあるのか風化して白っぽい青になっていた。

売店自体は昼休みしか空いてなくて、自動販売機が5、6台まとめて置いてあるエリアには、俺たち以外にも生徒が飲み物やパンを買いに来ていた。

中学生のころはこんなエリアなんかなければ買い食いも禁止だったから、初めてここに来たときはワクワクしてしまった。
一人でいちごミルクの紙パックを買いに来た。
それが、噂になって一人、また一人と俺の後についてくる人がいた。

女子の先輩が窓から俺を見下ろして、ヒソヒソと何かを話していた。

とりあえず会釈したら、キャーと手を振り替えしてくれた。

それから、売店にはあまり行かなくなった。何か実害があったとか、嫌な事をされたわけじゃない。

自意識過剰だと言われればそれまでだ。女子達だってただ飲み物を買いに来ていただけかもしれない。
女子先輩だって、本当は俺じゃなくて、他の話をしていただけかもしれない。

モテ自慢だと言われて終わる、なんて思って誰にも話したことはない。

ちょうど、今、田島くんが座っているベンチの位置が、その時、俺が座っていた場所だった。


スナイパーがいたら確実に当てられる場所に能天気に座りながら、田島くんが俺に笑いながら言った。

「かー!人の金で飲むジュースうまぁ!」

…さっき一瞬俺の心を揺らしたヤツとは別人なんだろうか。

「それは良かったね」

ムスッとした気持ちは底に沈めた。


「休憩終わったらあの子らが休憩入れるようにせんとな」

「そうだね。作業、あと文字色塗るだけかな?」

「せやな。でもだいぶ早めのペースで終わっていってる気がするわ。もうちょいや」

田島くんは、飲みきった空き缶を、ゴミ箱に放り投げた。放物線を描いて、金属製のゴミ箱をカタカタと鳴らした。

「う〜ん、やっぱり疲れるなあ。不器用で不慣れやし」

「そうかな。だいぶ田島くんに助けられてると思うよ。すぐ先生に聞いたりしてくれるし」

「俺、逆にみんな聞かない意味がわからんねん。みんなで話し合って決まるのが一番いいけど、意見言わんやん。無言の時間生まれるやん。その時間もったいないわ」

びし、と指差して俺のおでこをつく。

「せっかくやるなら全力で。これ、俺のモットー」

ああ、ぽいな。なんて納得させられる。