さて、もうひとりの攻めキャラ、専務である。こちらは一筋縄ではいかない。

彼は相模恭介の面接担当官である。他の面接担当官がOKを出したので渋々従ったが、専務は相模恭介を買ってはいなかった。笑顔とやる気だけでは仕事は出来ない。専務の仕事ぶりは社内でも噂されていた。
「専務、仕事はできてもあんな冷たいと嫌われるよねぇ」
勿論専務本人の耳にもその噂は入っていた。だが仕事さえきちんとしていればどう思われようと構わない。専務は社内で浮いた存在なのだ。

そんな専務とミーティングで相対する相模恭介。案の定レジュメの印刷部数を間違えてしまうというミスが起こってしまう。ミーティングの参加人数を間違って伝えてしまった同僚を庇い、専務に謝る相模恭介。謝って済むものじゃないとけんもほろろな専務。

だが専務のその態度は、相模恭介を嫌っているからという理由ではない事がひょんなことから発覚する。

入社当時の専務も、相模恭介と同じようにドジっ子だったのだ。
今も気を抜くとドジをしてしまうのではないかと気が気ではなく、つい冷たい態度を取ってしまうのだ、と知った相模恭介は、無意識に専務への態度を和らげていく。専務の好きな味のコーヒー、お気に入りの弁当。そんな小さな優しさに専務は…?

という展開であった。
確かにどちらの展開も愛されBL的には非常に美味しいものがある。甘々愛され社長派、ツンデレ愛され専務派。意見が分かれるのも無理はない。

だが今回の見どころはそこではない。
相模恭介が何故彼等に愛されたか、という点である。その点については、とても良いレポートを提出してくれた生徒がいるので紹介しよう。

「僕は、相模恭介の誰に対しても真っすぐな気持ちで接する姿が、愛され要素の一番大きい部分だと思います。打算や欲のない、相手を思いやる気持ち。それは意識して出すものでも、出せるものでもない。人知れず頑張る姿とそのいじらしさが社長の傷ついた心を温め、過去のトラウマに怯えていた専務には、失敗をしてもまたやり直せばいいんだというメッセージになった。僕は相模恭介がどちらのスパダリにも愛される理由がそこにある、と感じました」

このレポートは実に良い。作者の皇先生も非常に褒めていらっしゃった。

書いたのは…おや。この名前は。なるほどなるほど。