夜、叶人の家のドア前に来ると相変わらず、すぐにドアが開いた。

「陽向くん、お疲れ様!」

 バイトが終わった後、笑顔の叶人に会えると、いつも疲れはどこかへ飛んでいく。まっすぐ二階の叶人の部屋に行き、羊毛フェルト作業テーブルの前に座った。

「そういえばね、前にワカサギ釣りに行った時の写真もプリントしたよ」

 叶人が本棚からピンク色のアルバムを出した。そして俺にくっついて座り、中を開いて見せてくれた。

「この写真、やっぱりすごく綺麗だな」
「だね。この朝焼けを見た時は、すごく感動したよね!」

 今ふたりで見ている写真は、隼人先輩と夏樹に誘われて、早朝からワカサギ釣りに行った時の写真。暗い時間からワカサギ釣りの会場である湖に行って、テントを立ててワカサギを釣り始めた。ちょうど明るくなりかける時間に叶人とふたりでトイレへ行き、テントに戻るタイミングに偶然、その光景に出会った。そして急いで写真を撮った。

 積もった雪とピンク色の朝焼け。仲良く手を繋いで朝焼けを見ている、羊毛フェルトの俺と叶人の後ろ姿。羊毛フェルトのふたりは、叶人が毛糸で編んだお揃いのアイボリー色したセーターを着ていた。

 その時に叶人は、いつもよりも多い枚数の写真を撮っていた。俺もその場で、羊毛フェルトの俺たちを撮っている叶人の姿と朝焼けを何枚も撮った。

 実はその叶人が写った写真をスマホの待受画面にしている。白いスキーウェアのフードをかぶり、顔がフードのモコモコに囲まれていて、そんな叶人も可愛い。