俺と叶人が恋人になってから、時間はあっという間に過ぎていった。

 春が来て、俺たちは三年生になった。

 クラス替えをして叶人と同じクラスになれたから、同じ教室で過ごせている日々。もちろん羊毛フェルトも変わらず一緒にやっている。

「陽向くんと同じクラスになれて、嬉しすぎるよ」
「良かったな!」

 昼休み、羊毛をチクチクしながら叶人は言った。同じクラスになってから、毎日その言葉を叶人から聞いている。俺も、可愛い叶人を見れる時間が増えて、かなり嬉しい――。

「陽向くん、お互いにバイトが休みの日にお花見しようよ。羊毛フェルトの子たちと一緒にお花見して、桜と羊毛フェルトの子たちを撮るんだ!」
「いいな、叶人いつ休み? シフト見せて?」
「家に置いてきちゃった」
「じゃあバイト終わった後、見に行くかな?」
「明日休みだから、今日は泊まりかな?」
「そうだな、泊まるわ」

 最近叶人は手芸屋でバイトを始めた。

叶人のお小遣いでは足りない羊毛フェルト代やぬい活代は俺が出していた。俺は叶人のためだから、全く気になっていなかったけれど、それが不平等だと、叶人はとても気になっていたらしい。

そして羊毛フェルトの俺と叶人の季節に合わせた衣装も、毛糸を編んだり布を縫ったりして最近作り始めたから、叶人の手芸にかける出費も増えた。ちなみに羊毛フェルトの俺らが元々着ていたTシャツとチュニックは、下着扱いに。

 好きなものに囲まれて幸せらしいし、今のところは叶人のバイトの件で心配するところは何もない、と思う。

「お花見、いいなぁ。俺らも一緒に行こうかな?」

 再び同じクラスになった夏樹が会話に入ってきた。

「一緒に行っても、いいよ」

 今の発言はなんと、叶人の発言だ。

 夏樹と仲良くなったからってのもあるけれど、夏樹は実は写真を撮るのが上手だ。叶人は夏樹から写真を綺麗に撮れる方法を教えてもらったり、俺と叶人のツーショットを撮ってもらったりもしていた。それもあって叶人は、夏樹にそんな発言ができるようになったんだと思う。

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