「夏樹、ふたりの邪魔しないで、俺らもデート楽しも!」

 夏樹と隼人先輩は手を繋いで去っていった。
 ふたりの間には特別な空気を感じていたけれど、ふたりは恋人か、それに近いぐらいに仲が良いのかな? 

 仲良く手を繋いでるふたりの後ろ姿を見送る俺。ふと叶人に視線を向けると、叶人もふたりの後ろ姿を見ていた。叶人は寝ぼけながら、俺を恋の人として意識している、恋人になってもいいって言っていたっけ? 叶人も、俺と手を繋ぎたいって思っていたりするのかな? 俺は叶人とかなり手を繋ぎたい。

――俺は、叶人に触れたい。

 花畑の前にいる叶人の隣に立った。
 そして、勢いよく手をギュッと握り「俺らもランチに行こう?」と誘い、一緒に歩き始めた。

 叶人と繋がっている手の先にまで心臓があるみたいだ。手の先まで、もう、自分の全てがドキドキしている。

 叶人は今、手を繋いでどんな気持ちなんだろう。

 叶人の顔を見ると、俺と視線を合わせないように反対方向を向いている。わずかに見える叶人の表情は歪んでいた。

 ドクンと強く心臓が波打ち、明るかったドキドキの色は一気にどす黒い色へと変化した。

 もしかして、嫌だったのか?
 そういえば最近は、好きって伝えてくれる回数も減ったな。マイナスな思考が止まらなくなってきた。

 俺は叶人の表情を確認すると「ごめん」と言いながら急いで手を離した。

――最近の自分、くよくよしていて自分らしくないな。叶人にきちんと、聞いてみるかな。