「叶人、叶人?」

 しばらく辺りを探すも、叶人は見つからなかった。多分ふわふわしながら、どこかさまよい歩いているだけな気がするが、心配だ。どうしようかなと思っていた時だった。

 見つけた――!

 トイレから離れた場所にある、花畑の前に叶人はいた。

「叶人!」

 相手の男たちは後ろを向いていて顔が見えないが、叶人は今、二人組の男たちに話しかけられている。
 ナンパか? 叶人は誰が見ても可愛いからな。 
 イライラした気持ちと、助けなければならない使命感を交差させながら、叶人がいる方へ急いだ。

「叶人!」
「あっ、陽向くんに会えた! 良かった!」

 叶人の声が合図のように、男たちも振り向いた。

「あっ――」

 叶人をナンパしていると思っていた男たちはなんと、クラスメイトの夏樹とバイトの先輩、隼人先輩だった。

「何故夏樹と隼人先輩が一緒に?」
「陽向がバイトしてるカフェに友達と行ってみたらさ、隼人くんと意気投合しちゃって、仲良くなっちゃった」
「いつ俺のバイト先に来た?」
「最近、陽向が休みの日」

 夏樹は隼人先輩と目を合わせ、微笑みあった。なんとなくだけど、ふたりの間には特別な空気が流れている気がした。