二階にある自分の部屋に行き、部屋着にしている白色のジャージに着替えると、机に向かう。途中まで作っていた羊毛フェルトのスズメ制作作業を再開するために。

 各パーツは出来ていたから、あとはそれらを繋げるだけ。さっきの陽向くんとの件で、気持ちがもやもやしながらだったけれど、何とか完成させた。

「かわいい!」

 作ったスズメの目は、目の部分に目打で穴を開け、そこに差し込むタイプのネジみたいな黒い目。つぶらでキラキラしている目と、僕の目が合った。まるで「命を吹き込んでくれてありがとう」と言われているようだ。

 部屋の中は薄暗い。部屋の壁時計を確認すると十八時。窓から外を見ると、夕日も沈む頃。

 集中するとあっという間に時間は過ぎていくよね。

 ちょうどその時に、下から「ご飯だよ」と、お母さんの声がした。作業していた机の上にスズメを置くと下へ行った。

 ご飯中、お母さんが「どうしたの? 何かあった?」と質問してきた。

 お母さんの洞察力はすごい。

「陽向くんが僕にムッとした気がしていて……」
「あら、喧嘩?」
「喧嘩っていうか……喧嘩っていうか?」

 喧嘩なのかな?
 陽向くんは僕が秘密事をしたことに怒っていた気がする。

「何があったのかは分からないけれど、陽向くんは、叶人のことが大好きだと思うよ」
「うん、そうだよね――」

 僕は自分にも言い聞かすように、そう返事をした。

 ご飯食べている時も、お風呂に入ってる時もずっと陽向くんのことが気になった。陽向くんの部屋は、陽向くんの家の一階にある。

 寝る前に、陽向くんの部屋をそっと覗いてみようかな? さっき完成させた羊毛フェルトのスズメも持って。

 僕は静かに玄関へ行くと、外に出た。