俺は一階にある風呂に向かった。

 俺が泊まることを親に伝えておくと叶人は言っていたけれど、多分叶人は頭の中が忙しくて忘れていそうだから、途中、リビングを通り直接叶人の両親に泊まるのを伝えた。そしたらいつものように優しい叶人の両親は、笑顔で受け入れてくれた。

 浴室に行くと全身を洗い、湯船に浸かる。
 この家の湯船の中には、いつも俺の好きな森の香りと色がする入浴剤が入っている。思いきり香りを吸い込んだ。

 答えはほぼ見つかったけれど、頭の中を整理してみよう。
 
「そんな好きではないし」

 俺の頭の中を悩ませていた言葉はこれだ。
 たしか、その前に「お前ら恋人みたいだな」とクラスメイトの夏樹の言葉もあった。

『恋人としての、好きではない』

――はぁ、そういうことかよ!

 叶人から嫌われたら、もう何もやる気しない。想像しただけでしんどい。お湯の中に顔を沈めた。

 嫌われていなくて、よかった!

 だけど、叶人は恋人としての好きではないって言っていたけど、叶人もドキドキしていたし。

 ハグした時の感触を思い出して、お湯の中から顔を出した。緊張感と叶人を愛おしいと感じた気持ち。それに、俺も先輩が教えてくれたドキドキ、かなりした。

――俺は、叶人を恋の人として好き、かもしれない可能性もある。

 いつも通りに過ごせばいいと、叶人には言ったものの、どうすればいいのか。