「そう、恋……らしい。さっき先輩が言ってたんだけど、ハグをした時にドキドキしたら恋をしているらしい」
「えっ、じゃあ僕たちは恋を――?」

 胸から離れた両手を小刻みに震わす叶人は、続けて聞いてきた。

「じゃあ、僕たちはこれからどうすればいいの?」
「……いつも通りに過ごしていいと、思う」
 
 自分にも言い聞かすように、俺は叶人にそう言った。

「普段通りに……だよねっ、だよね! じゃあさ陽向くん、うさぎのもっふんちゃま土日で仕上げちゃお? あ、バイト明日は夕方からだっけ? 今日泊まっていく? そしたら朝からまた一緒に作業できるよね?」

「全部まとめて、そうしようかな」
「じゃあ、お風呂入っちゃう? 僕はさっき入ったからね」

 叶人の部屋にある、俺専用の引き出しに常備してあるお泊まりセットを、いつもは自分で準備しているのに。今日は叶人が引き出しを開けてパジャマや歯磨きセットを出して準備してくれた。

 あきらかに動揺している叶人。

「はい、これ。お風呂いってらっしゃい! 僕はお母さんたちに陽向くんが泊まること言っておくからね」
「あ、あぁ、ありがとう」

 てんやわんやしている叶人をじっと見つめた。
 そんな姿も可愛い。

 ハグしたらドキドキした様子だったし、俺のこと、好きなのか嫌いなのか――。この際、はっきりさせたくなってきた。