自分の家に自転車を置いてから叶人の家のドアの前に立つと、すぐにドアは開いた。

「陽向くん、バイトお疲れ様でした」

 ニコッと微笑む叶人。

「叶人、これ渡しに来た」

 小さな紙袋を渡すと、叶人は袋の中を覗き白いプリンを確認する。

「やった! ありがとう!」

 喜んでくれて、嬉しい――。

「あと、ちょっと部屋に上がらせてもらっていい?」
「もちろん、いいよ! 明日は学校休みだし、ゆっくり起きてられるよね。うさぎのもっふんちゃまやる?」
「やろっかな? 実は鞄に入ってる」
「陽向くん、さすがだね!」

 そうして叶人の部屋の中に入ったはいいが、どう聞けばいいのか? 俺はしばらく作業をせずに、羊毛をチクチクしている叶人をじっと見つめていた。

「陽向くん、どうしたの?」

 しばらくすると、叶人は眉を寄せて困ったような表情で質問してきた。なんて答えようか――。俺のことが好きか嫌いか、直接聞いちゃうか? でもやっぱり傷つく返事をされる可能性もあるわけだし、怖いな。多分、嫌いって言われたら、俺の心の中が一瞬で灰になってしまうと思う。

 ふと、さっきの先輩の言葉が頭の中にふわふわと浮かんできた。

『陽向、恋してるか確認する方法はハグをしてみるんだ。恋をしていれば陽向も相手もドキドキする。恋の一歩手前で、あともう少しの場合もハグによって相手を意識させることができる可能性もある。まぁ、それは確実ではなくて、俺の経験からのアドバイスだけどな』

 試しにハグをしてみようか――。

「ねぇ叶人、今から叶人をハグしてみて、いい?」
「どうしたの急に」
「ちょっと、確認したいことがあって……」
「いいけど……」