二学期の中間テストが迫る中、教室に入るなり今までにないほど頭を抱え自分の机に突っ伏している。


 オレ、水樹陽(みずきはる)は今、盛大に落ち込んでいる。


 部活にのめりこんでいるわけでもない、彼女ができることもない。ダラダラと、十七年という人生を過ごしてしまったと思う。


 オレの青春はもう終わってしまった。


「陽、おはよ」


 それもこれも、この国宝級のイケメン、難波優冴(なんばゆうご)の傍にい続けたことが原因だと思う。


 黒色のツヤがある髪はサラサラしていて、顔は非の打ち所がないほど整っている。目は二重でパッチリとしていて、鼻筋はスッと通っており、おまけに、ふと笑った時に見せる笑顔はとてつもなくカッコイイ。


 そんなパーフェクト男子の傍にい続け早五年。誰一人、オレに告白してくれる女の子は現れなかった。


 よく、『モテ男の傍にい続けたら、かっこよくないヤツでもかっこよく見えてしまう』と言ったりするけれど、オレの場合、全然そんなミラクルが起きることもなかった。


 イケメンの傍にい続けたからといって、オレ自身がモテるわけではなかった。


 もちろん、そんな不順な動機で今まで一緒にいたわけではないが、今ほんの少しだけその動機を求めてしまった。


 未だふて腐れるように机に顔を伏せていると、優冴はオレの頭にポンポンと優しく触れた。


「何か悩んでんの?」


 優しいトーンで声を掛けられたため、せめて何かしらの反応はしないといけない、と、ゆっくりと頷く。


 『青春を置き去りにしてしまったことに悩んでいる』なんて、オレ以外が理解し難いことはいちいち言わないけど。それでも優冴はオレから何かを察したらしい、

「中間テストなら心配しなくても大丈夫だよ。俺、バイト休みもらえたし。一緒にテスト勉強するから」

 オレが毎回赤点ギリギリだからだろうか。テストのことで悩んでいると思われ、励まされてしまった。