朝が来ると、体が自然と目を覚ました。
窓から差し込む朝の光が昨日の疲れを少しずつ癒してくれるように感じる。
準備を整え、約束通り八時に彗と待ち合わせをするために家を出た。
外に出ると、彗がすでに待っていて軽く手を振ってくれている。その顔を見るとなんだか昨日の心の中のもやもやが少し晴れるような気がした。
「…はよ」
「おはよう、彗。眠そうだね」
随分眠そうにしている彼に朝から思わず笑いがこぼれそうになる。
「うん。なんか楽しみで 」
「楽しみって…なんかあったけ?」
修学旅行も明けて特に学校でイベントなんてないはずだけれど。なにかあっただろうか。
私の発言に、彗は少し驚いたような表情をしてからふっと軽く笑った。
「はは、秘密」
「ええ!なにそれ!気になるじゃん…」
彗が夜に眠れなくなるほど楽しみなことなんてよっぽどなことだろう。結局どれだけ聞いてもなにも教えてくれない彼に少しむすっとしてしまうが、折れてくれる気はないらしい。
「ほんと彗って、意外と頑固…」
ぼそっと言った言葉に「そうだな」と適当に流されてしまうが、その表情には少し切なさが含まれているように見えた。
「彗、どうかした?」
「…なにが?てか宙となんか話してたよな、なんか言われたの」
「え?うーん…宙くんなら私があの時悩んでたのに気付いて、励ましてくれただけだよ」
少し間が空いてからあからさまに話題を逸らすように話す彼がなにを考えているのか気になってしまう。
ちらっと頭の上を見るもそういえば変わらないんだった…と思い出す。無意識的につい仮面を見てしまう私は、まだ癖が抜けきれていないらしい。
「そっか」
「うん。優しいよね」
「…あぁ。宙のおかげだな、色々と」
急にそんなことを言う彼に驚いてしまう。茶化すように軽く笑みを浮かべているけれど、それがどこか本心じゃないような気がして思わず言ってしまう。
「もちろん宙くんのおかげで助けられたけど…でも、彗がいたからこそ頑張れたこともたくさんあったよ」
これは本心だった。あの時、彗が声をかけてくれていなかったら私は変わろうとすら思えなかったかもしれない。
背中を押してくれなかったらここまで来れていなかったかもしれない。
私が安心して頑張れたのは__まぎれもなく彗のおかげだ。
私の言葉に、彗は目を丸くしていた。彼の表情を見て私も我に返る。つい真剣に言い過ぎてしまったけれど、思い返すと急に自分の言ったことが恥ずかしくなる。
「えっと…その、いやでも嘘じゃないし…」
ぶつぶつと呟きながら慌てていると、ふと隣から笑い声が聞こえてくる。
「ふふっ…慌てすぎ」
その笑顔に思わず目を見開いてしまう。それは初めて見る表情でまるで別人のようだ。彗が笑う姿は何度か見てきたけれど、今の笑顔はいつもよりも穏やかで、まるで花が咲いたような優しい笑顔に見える。
その時、視界に彗の仮面が入り込み、思わず驚いて腕を伸ばしてしまう。
「っ…!!」
「…なに?」
彗の驚いた声にハッとして、ふと彼の頭に触れてしまったことに気付いた。
慌てて手を引っ込めたがさっき見た仮面のことがまだ頭の中から離れない。
以前、仮面にひびが入っているのを見た時は見間違いだと思っていた。でもやっぱり違う。今はっきりと見えたのだ。
彼の仮面に確かに入っていた__ひび。
もう一度見た時には、もう既に以前と同じように何もなくなっていたけれど。
何も言わずにいる私を不審そうに見つめる彼に、慌てて「ご、ごみがついてたから…!」とそれらしい理由を返した。
彗はまだ疑いの表情を浮かべていたけれど、私は気にしないように学校に向かうことにした。
窓から差し込む朝の光が昨日の疲れを少しずつ癒してくれるように感じる。
準備を整え、約束通り八時に彗と待ち合わせをするために家を出た。
外に出ると、彗がすでに待っていて軽く手を振ってくれている。その顔を見るとなんだか昨日の心の中のもやもやが少し晴れるような気がした。
「…はよ」
「おはよう、彗。眠そうだね」
随分眠そうにしている彼に朝から思わず笑いがこぼれそうになる。
「うん。なんか楽しみで 」
「楽しみって…なんかあったけ?」
修学旅行も明けて特に学校でイベントなんてないはずだけれど。なにかあっただろうか。
私の発言に、彗は少し驚いたような表情をしてからふっと軽く笑った。
「はは、秘密」
「ええ!なにそれ!気になるじゃん…」
彗が夜に眠れなくなるほど楽しみなことなんてよっぽどなことだろう。結局どれだけ聞いてもなにも教えてくれない彼に少しむすっとしてしまうが、折れてくれる気はないらしい。
「ほんと彗って、意外と頑固…」
ぼそっと言った言葉に「そうだな」と適当に流されてしまうが、その表情には少し切なさが含まれているように見えた。
「彗、どうかした?」
「…なにが?てか宙となんか話してたよな、なんか言われたの」
「え?うーん…宙くんなら私があの時悩んでたのに気付いて、励ましてくれただけだよ」
少し間が空いてからあからさまに話題を逸らすように話す彼がなにを考えているのか気になってしまう。
ちらっと頭の上を見るもそういえば変わらないんだった…と思い出す。無意識的につい仮面を見てしまう私は、まだ癖が抜けきれていないらしい。
「そっか」
「うん。優しいよね」
「…あぁ。宙のおかげだな、色々と」
急にそんなことを言う彼に驚いてしまう。茶化すように軽く笑みを浮かべているけれど、それがどこか本心じゃないような気がして思わず言ってしまう。
「もちろん宙くんのおかげで助けられたけど…でも、彗がいたからこそ頑張れたこともたくさんあったよ」
これは本心だった。あの時、彗が声をかけてくれていなかったら私は変わろうとすら思えなかったかもしれない。
背中を押してくれなかったらここまで来れていなかったかもしれない。
私が安心して頑張れたのは__まぎれもなく彗のおかげだ。
私の言葉に、彗は目を丸くしていた。彼の表情を見て私も我に返る。つい真剣に言い過ぎてしまったけれど、思い返すと急に自分の言ったことが恥ずかしくなる。
「えっと…その、いやでも嘘じゃないし…」
ぶつぶつと呟きながら慌てていると、ふと隣から笑い声が聞こえてくる。
「ふふっ…慌てすぎ」
その笑顔に思わず目を見開いてしまう。それは初めて見る表情でまるで別人のようだ。彗が笑う姿は何度か見てきたけれど、今の笑顔はいつもよりも穏やかで、まるで花が咲いたような優しい笑顔に見える。
その時、視界に彗の仮面が入り込み、思わず驚いて腕を伸ばしてしまう。
「っ…!!」
「…なに?」
彗の驚いた声にハッとして、ふと彼の頭に触れてしまったことに気付いた。
慌てて手を引っ込めたがさっき見た仮面のことがまだ頭の中から離れない。
以前、仮面にひびが入っているのを見た時は見間違いだと思っていた。でもやっぱり違う。今はっきりと見えたのだ。
彼の仮面に確かに入っていた__ひび。
もう一度見た時には、もう既に以前と同じように何もなくなっていたけれど。
何も言わずにいる私を不審そうに見つめる彼に、慌てて「ご、ごみがついてたから…!」とそれらしい理由を返した。
彗はまだ疑いの表情を浮かべていたけれど、私は気にしないように学校に向かうことにした。