莉桜と私は肝試しのスタート地点から、さっきと同じようにしばらく無言のまま進んだ。
神社の境内は夜になると一層静まり返り、木々のざわめきがやけに大きく聞こえる。

どこかぎこちない雰囲気の中、莉桜が突然口を開いた。

「ねえ、想乃って…宙のこと好きなの?」

不意を突かれて、一瞬息が詰まる。私は慌てて否定する。

「いやいや、そんなことないよ!全然…」

しかし莉桜の表情は納得していないようだった。彼女は私をじっと見つめ、さらに続ける。

「でも、宙ってよく想乃に話しかけてるじゃん。私、見てるから」
彼女の目は鋭く、逃げ場のない感じがした。仮面も同じように徐々に怒りの表情が増えていく。私は曖昧に笑って答える。

「宙くんは、みんなにそんな感じじゃない…?あんまり深い意味はないと思うけど」

言葉が自分でも頼りなく感じられる。気まずい沈黙が二人の間に広がる中、莉桜は一歩近づいてきてさらに問い詰めるように話を続けた。

「でもさ、最近宙が想乃ちゃんにばっかり話しかけてるの気づいてないの?私には違って見えるんだけど」

彼女の言葉に、私は思わず息をのむ。
確かに宙くんが私に話しかけてくることが多いのは気づいていたが、それがどういう意味なのかなんて考えたこともなかった。

気まずさと緊張で胸が締め付けられるような感じがして、私は思わず話題を変えるように、逆に莉桜に質問を投げかける。

「莉桜こそ、宙くんのこと好きなの?彼氏さんとは別れたの?前に付き合ってたよね…」

私の質問に莉桜は一瞬だけ驚いたように目を見開いたが、すぐに冷たい笑みを浮かべた。

「彼氏なんて、ほんとはどうでもよかったの。あいつと付き合ったのは宙に相談できるネタが欲しかったから。ただそれだけ」

彼女の言葉は衝撃的で、私は言葉を失った。莉桜は続けて話し始めた。

「私、三年前から宙が好きだったの。でも想乃が現れてから、宙が少しずつ変わったのを感じてた。だからもっと宙に近づきたくて、彼氏の話を相談したりしてたのよ」

その言葉に私は驚きとともに彼女の本音を知ったことで心がざわめくのを感じた。莉桜は、ずっと宙くんを見ていたのだと気づかされた。

「だから、宙が想乃にばかり話しかけるのが気に入らないの。私は…宙が好きなんだから」

彼女の言葉は鋭く、そして切実だった。私はどう返事をすればいいのかわからずただ彼女の顔を見つめていた。
静かな神社の夜の中で、私たちの間に漂う緊張と張り詰めた空気が、さらにその場の不安感を募らせていくのが感じられた。