「よし…頑張るんだ!私!」
鏡の前で自分にそう言い聞かせる。昨日の夜、心の中で決めたんだ。次は私が彗を救う番だって。
…この気持ちをぶつけるんだ。
「想乃、行こー!」
唯の声が玄関の外から聞こえてきた。いつも明るくて、私を励ましてくれる彼女には感謝しかない。
唯と一緒にいると、不思議と安心するのが分かる。
「はーい、今行く!」
急いで鞄を持って、玄関へ向かう。唯はいつも通り元気いっぱいな笑顔を浮かべている。
「今日もちゃんと眠れた?顔色悪くないから大丈夫そうだね」
「うん、昨日はぐっすり寝たよ」
本当はまだ心の中で少しモヤモヤが残っているけど、今はそんなこと言っていられない。
少しでも前に進むためにまずは学校へ行って彗と話をするんだ。
「じゃ、行こっか」
唯と並んで歩きながら私は自分に言い聞かせる。
素直に、ありのままの私で怖がったりしてる自分には絶対に負けない。彗が言ってくれた言葉だ。
学校に着くと、校庭にもあちこちに生徒たちが集まっている。私はさっそく彗の姿を探してみるけどクラスメイトたちの間で話をしているのが見えた。
でも…何か違う。その輪のなかに宙くんもいるけれど、彗はいつもより口数が少ないし、お互いが気まづそうで二人は一切会話を交わしてない。
ふと、彗の目がこちらを見たかと思うとすぐにそらされた。
あ、また話せなかった…。胸の奥がぎゅっと痛む。
「二人とも、元気なさそうだね…」
唯が小さな声でつぶやいた。
「うん、でも今日話しかけてみるよ。頑張って…話そうって決めたんだもん」
そんな風に言い聞かせるものの、気持ちの整理がつかないままチャイムが鳴り、結局そのまま授業が始まってしまった。
話しかけるチャンスはいつもすぐに遠のいていく。
授業の合間にも彗に声をかけようと何度も思ったけど、先生に呼ばれたり、彗がすぐに教室を出たりと、なかなかタイミングが合わない。
…そして気付けば昼休み。時間がどんどん過ぎていっていた。
「今こそ…!」
お昼ご飯を食べようとする手を止めて、私は勇気を出して席を立つ。
ガタンッ。
思ったよりも大きな音を立ててしまって、教室中が一瞬静まり返る。唯も目を丸くして私を見ていた。
恥ずかしくて顔が真っ赤になるけど、今はそんなこと気にしていられない。彗に話しかけなきゃ。
彗と目が合った。でも、またすぐに目をそらされて彼はお弁当を持って教室を出ていってしまう。
いつもなら宙くんと一緒に食べているのに、今日は宙くんも別の男子たちと話しているみたいだった。
その姿を見て、また胸がちくりと痛む。きっと…二人だってこんなことになりたいわけじゃない。
「想乃、大丈夫だよ!行ってこい!」
浮かない表情をしている私に、唯が笑顔で背中を押してくれる。
「…うん!」
私は小さく返事をして、急いで彗の後を追った。
彗は思っていたよりも足が速くて、追いつくのに時間がかかりそうだ。急いで彼のあとを追い廊下を曲がる。
階段を駆け上がるたびに心臓の音が耳に響いてくる。少し息が切れて、胸の中が焦りと緊張でいっぱいだ。あと少し…そう思いながら最後の一段を踏み出すと、屋上への扉が目の前に現れた。
「はぁ…はぁ…」
ドアを開けると、ひんやりとした風が頬に触れて、少しだけ熱くなった顔を冷ましてくれる。
屋上はいつも通り静かでまるで世界から切り離されたかのように感じる。そんな中、彗は一人でフェンスのそばに立って、遠くの空をじっと見つめていた。
風で少し髪が揺れる彼の背中はなんだかいつもより小さく見える。声をかけたいのに足が少しだけすくんでしまう。
でも、ここで諦めたくない。そう自分に言い聞かせて、私は一歩踏み出した。
「彗…!」
静かに、でも確かな声で彼の名前を呼んだ。その瞬間、彼の背中がピクリと反応した。
鏡の前で自分にそう言い聞かせる。昨日の夜、心の中で決めたんだ。次は私が彗を救う番だって。
…この気持ちをぶつけるんだ。
「想乃、行こー!」
唯の声が玄関の外から聞こえてきた。いつも明るくて、私を励ましてくれる彼女には感謝しかない。
唯と一緒にいると、不思議と安心するのが分かる。
「はーい、今行く!」
急いで鞄を持って、玄関へ向かう。唯はいつも通り元気いっぱいな笑顔を浮かべている。
「今日もちゃんと眠れた?顔色悪くないから大丈夫そうだね」
「うん、昨日はぐっすり寝たよ」
本当はまだ心の中で少しモヤモヤが残っているけど、今はそんなこと言っていられない。
少しでも前に進むためにまずは学校へ行って彗と話をするんだ。
「じゃ、行こっか」
唯と並んで歩きながら私は自分に言い聞かせる。
素直に、ありのままの私で怖がったりしてる自分には絶対に負けない。彗が言ってくれた言葉だ。
学校に着くと、校庭にもあちこちに生徒たちが集まっている。私はさっそく彗の姿を探してみるけどクラスメイトたちの間で話をしているのが見えた。
でも…何か違う。その輪のなかに宙くんもいるけれど、彗はいつもより口数が少ないし、お互いが気まづそうで二人は一切会話を交わしてない。
ふと、彗の目がこちらを見たかと思うとすぐにそらされた。
あ、また話せなかった…。胸の奥がぎゅっと痛む。
「二人とも、元気なさそうだね…」
唯が小さな声でつぶやいた。
「うん、でも今日話しかけてみるよ。頑張って…話そうって決めたんだもん」
そんな風に言い聞かせるものの、気持ちの整理がつかないままチャイムが鳴り、結局そのまま授業が始まってしまった。
話しかけるチャンスはいつもすぐに遠のいていく。
授業の合間にも彗に声をかけようと何度も思ったけど、先生に呼ばれたり、彗がすぐに教室を出たりと、なかなかタイミングが合わない。
…そして気付けば昼休み。時間がどんどん過ぎていっていた。
「今こそ…!」
お昼ご飯を食べようとする手を止めて、私は勇気を出して席を立つ。
ガタンッ。
思ったよりも大きな音を立ててしまって、教室中が一瞬静まり返る。唯も目を丸くして私を見ていた。
恥ずかしくて顔が真っ赤になるけど、今はそんなこと気にしていられない。彗に話しかけなきゃ。
彗と目が合った。でも、またすぐに目をそらされて彼はお弁当を持って教室を出ていってしまう。
いつもなら宙くんと一緒に食べているのに、今日は宙くんも別の男子たちと話しているみたいだった。
その姿を見て、また胸がちくりと痛む。きっと…二人だってこんなことになりたいわけじゃない。
「想乃、大丈夫だよ!行ってこい!」
浮かない表情をしている私に、唯が笑顔で背中を押してくれる。
「…うん!」
私は小さく返事をして、急いで彗の後を追った。
彗は思っていたよりも足が速くて、追いつくのに時間がかかりそうだ。急いで彼のあとを追い廊下を曲がる。
階段を駆け上がるたびに心臓の音が耳に響いてくる。少し息が切れて、胸の中が焦りと緊張でいっぱいだ。あと少し…そう思いながら最後の一段を踏み出すと、屋上への扉が目の前に現れた。
「はぁ…はぁ…」
ドアを開けると、ひんやりとした風が頬に触れて、少しだけ熱くなった顔を冷ましてくれる。
屋上はいつも通り静かでまるで世界から切り離されたかのように感じる。そんな中、彗は一人でフェンスのそばに立って、遠くの空をじっと見つめていた。
風で少し髪が揺れる彼の背中はなんだかいつもより小さく見える。声をかけたいのに足が少しだけすくんでしまう。
でも、ここで諦めたくない。そう自分に言い聞かせて、私は一歩踏み出した。
「彗…!」
静かに、でも確かな声で彼の名前を呼んだ。その瞬間、彼の背中がピクリと反応した。