俺たちは二年生になった。
そして暖かい季節になってきた時だった。
放課後、寮に向かって歩いていると、俺と同じクラスの、不良なやつら三人に絡まれている小柄な生徒がいた。よくみると、絡まれているのは遥斗だった。三人に囲まれ、肩を触られたりしている。遥斗は、鞄をぎゅっと抱きしめながら縮こまり、怯えている様子だった。
「白川!」
名前を呼ぶと、遥斗はこっちを向く。遥斗の表情が一瞬だけ緩んだ。
「おまえら、何してるの?」
同じクラスで、普段関わってるやつらだけど、そんなのは関係ない。遥斗を怖がらせ、そんな表情にさせて。怒りがこみ上げてくる。
「白川のこと、怖がらせてただろ?」
「いや、別にそんなことしてないし」
「白川は、俺の大事な人なんだから。何かしたら許さないから!」
「いや、何もしてないって。ただ可愛いなって、話しかけてただけで……」
喧嘩は好きじゃないけど、遥斗のためなら迷わず戦う覚悟を決めた。
でも睨みつけるとクラスのやつらは去っていった。去るのを見送ると、その場にしゃがみこむ遥斗。
「白川、大丈夫か?」
「うん、大丈夫だよ」
遥斗は震えていた。
泣きそうな表情もしている。
全く大丈夫ではない雰囲気だ。
近くのベンチに座らせ、背中を優しくなでて遥斗を落ち着かせた。
「白川、何もされなかったか?」
「うん、されてないよ」
「とりあえず部屋に戻るか?」
「うん、戻る」
一緒に部屋に戻ると、部屋着の半袖Tシャツとジャージにそれぞれ着替えた。
「本当に何もされていないか?」
「されてないよ、だってすぐに菅田くんが助けに来てくれたから」
遥斗はそう言ったけれど、心配だったからどこか怪我していないか、無理やりチェックさせてもらった。すると膝辺りに怪我をした跡がいくつもあって、新しい感じの傷も見つけた。遥斗を座布団に座らせ、救急箱から絆創膏を出して、そこに貼る。
「これってもしかして、あいつらにやられたのか?」
「いや、違くて……僕、実はよく転ぶんだよね」
「本当に転んだ傷?」
「うん、本当だよ」
余計な心配かけないために嘘ついている可能性もあるけど、信じよう。
「そんなに転んで……痛いだろ?」
「平気だよ全然痛くないよ、大丈夫」
こんな傷、痛いだろ?
痛いに決まってる。
なのに遥斗は――。
「それよりも、さっきので、お友達とこれからの生活で気まずくならない? ごめんね」
「別に、大したことないし」
遥斗が傷つくことに比べたら、本当に大したことはない。
俺は遥斗をじっと見つめた。
俺のことより今は、遥斗自身のことだろ。
「あとね、さっき嘘だったとしても『大事な人』って言ってくれて、ありがとう。嬉しかったよ」
遥斗は俺と視線を合わせずに、俺が今貼った絆創膏を見ながら微笑んだ。
その優しさも、危なっかしいところも。
全て守りたくて、遥斗の全てが知りたい。
気がつけば、遥斗は大切な存在になっていた――。
「本当に白川は、『大事な人』だし」
遥斗はちらっとこっちを見て、再び視線をそらしてきた。そして顔を赤らめる。つられて俺も顔が熱くなってきた。多分俺の顔も、赤くなっていた。
***
そして暖かい季節になってきた時だった。
放課後、寮に向かって歩いていると、俺と同じクラスの、不良なやつら三人に絡まれている小柄な生徒がいた。よくみると、絡まれているのは遥斗だった。三人に囲まれ、肩を触られたりしている。遥斗は、鞄をぎゅっと抱きしめながら縮こまり、怯えている様子だった。
「白川!」
名前を呼ぶと、遥斗はこっちを向く。遥斗の表情が一瞬だけ緩んだ。
「おまえら、何してるの?」
同じクラスで、普段関わってるやつらだけど、そんなのは関係ない。遥斗を怖がらせ、そんな表情にさせて。怒りがこみ上げてくる。
「白川のこと、怖がらせてただろ?」
「いや、別にそんなことしてないし」
「白川は、俺の大事な人なんだから。何かしたら許さないから!」
「いや、何もしてないって。ただ可愛いなって、話しかけてただけで……」
喧嘩は好きじゃないけど、遥斗のためなら迷わず戦う覚悟を決めた。
でも睨みつけるとクラスのやつらは去っていった。去るのを見送ると、その場にしゃがみこむ遥斗。
「白川、大丈夫か?」
「うん、大丈夫だよ」
遥斗は震えていた。
泣きそうな表情もしている。
全く大丈夫ではない雰囲気だ。
近くのベンチに座らせ、背中を優しくなでて遥斗を落ち着かせた。
「白川、何もされなかったか?」
「うん、されてないよ」
「とりあえず部屋に戻るか?」
「うん、戻る」
一緒に部屋に戻ると、部屋着の半袖Tシャツとジャージにそれぞれ着替えた。
「本当に何もされていないか?」
「されてないよ、だってすぐに菅田くんが助けに来てくれたから」
遥斗はそう言ったけれど、心配だったからどこか怪我していないか、無理やりチェックさせてもらった。すると膝辺りに怪我をした跡がいくつもあって、新しい感じの傷も見つけた。遥斗を座布団に座らせ、救急箱から絆創膏を出して、そこに貼る。
「これってもしかして、あいつらにやられたのか?」
「いや、違くて……僕、実はよく転ぶんだよね」
「本当に転んだ傷?」
「うん、本当だよ」
余計な心配かけないために嘘ついている可能性もあるけど、信じよう。
「そんなに転んで……痛いだろ?」
「平気だよ全然痛くないよ、大丈夫」
こんな傷、痛いだろ?
痛いに決まってる。
なのに遥斗は――。
「それよりも、さっきので、お友達とこれからの生活で気まずくならない? ごめんね」
「別に、大したことないし」
遥斗が傷つくことに比べたら、本当に大したことはない。
俺は遥斗をじっと見つめた。
俺のことより今は、遥斗自身のことだろ。
「あとね、さっき嘘だったとしても『大事な人』って言ってくれて、ありがとう。嬉しかったよ」
遥斗は俺と視線を合わせずに、俺が今貼った絆創膏を見ながら微笑んだ。
その優しさも、危なっかしいところも。
全て守りたくて、遥斗の全てが知りたい。
気がつけば、遥斗は大切な存在になっていた――。
「本当に白川は、『大事な人』だし」
遥斗はちらっとこっちを見て、再び視線をそらしてきた。そして顔を赤らめる。つられて俺も顔が熱くなってきた。多分俺の顔も、赤くなっていた。
***