週末、座布団を一緒に買いに行く約束をした日。
遥斗は朝からそわそわしていて明らかに緊張しているようだった。その緊張が伝染してなのか、俺もそわそわした気持ちになる。たかが遥斗と一緒に隣町のショッピングモールに行くだけなのに。普段感じることのない、そわそわ感。
準備を終えると寮の前にあるバス停からバスに乗り、店に向かった。ひとりがけ用の椅子。前には遥斗、後ろに俺が並んだ。寮の中以外で遥斗とふたりきりでいるのが、不思議な気分だった。
十五分ぐらい経つと、店に着く。
「俺、こういうところに来るの、久しぶりかも」
「うん、僕も」
遥斗は大人しいのはいつもと変わらないけれど、声がいつもよりも弾んでいる。楽しいのだろうか?
広い雑貨売り場に着くと、一緒に見て回った。ずっと俺の様子を伺って付いて来るから「それぞれ自由に売り場見るか?」と声を掛けると遥斗は頷く。ひとりでさまよっていると、ふたり並んで座れる、ふわふわで長めの座布団を見つけた。素材を確認するため触ってみる。
――でも、結局普段は遥斗がひとりで座る感じだから、小さいのでもいいのかな?
「あ、これ可愛い!」
座布団を眺めながら考えていると、遥斗が俺の隣に戻ってきて、俺が見ていた座布団を指さした。
「これにするか?」
「うん。これだと一緒に座れるしね!」
俺とふたりで座るの想像してくれてたんだ――。なんか心の奥辺りがムズムズしてくる。
「色は、白と水色とベージュとピンクか……白川どれがいい?」
「どうしようかな? 菅田くんは?」
質問返ししてくると思った。
「白川は、何色が好きなの?」
遥斗は座布団の色を確認して「優しい色かな?」と言いながら首を傾げる。
「全部優しい色じゃん。この中ではどれが好き?」
「……水色、かな?」
「じゃあ、水色だな」
会計をしながら俺は、座布団でふたり並んで座る様子を想像した。
会計が終わると、店の中にあるフードコートで昼ご飯の牛丼を一緒に食べた。それから日用品売り場をさまよってから外に出ようとすると、出口とは逆方向に向かう遥斗。
「白川、出口そっちじゃないよ」
そう言いながら無意識に遥斗の手を握ったけど、少し経つと、はっとした。そして意識してその手を急いで離す。
遥斗は意識していたのだろうか。多分していないかな?
ちらっと遥斗の顔を見たら、ちょっと目が泳いでいた気がした。それは気のせいかもしれないけれど、手を繋いだことに対して、遥斗も意識してくれてたらいいのになと少し思ってしまう。
遥斗の手の感触を、しばらく思い出していた――。
***
遥斗は朝からそわそわしていて明らかに緊張しているようだった。その緊張が伝染してなのか、俺もそわそわした気持ちになる。たかが遥斗と一緒に隣町のショッピングモールに行くだけなのに。普段感じることのない、そわそわ感。
準備を終えると寮の前にあるバス停からバスに乗り、店に向かった。ひとりがけ用の椅子。前には遥斗、後ろに俺が並んだ。寮の中以外で遥斗とふたりきりでいるのが、不思議な気分だった。
十五分ぐらい経つと、店に着く。
「俺、こういうところに来るの、久しぶりかも」
「うん、僕も」
遥斗は大人しいのはいつもと変わらないけれど、声がいつもよりも弾んでいる。楽しいのだろうか?
広い雑貨売り場に着くと、一緒に見て回った。ずっと俺の様子を伺って付いて来るから「それぞれ自由に売り場見るか?」と声を掛けると遥斗は頷く。ひとりでさまよっていると、ふたり並んで座れる、ふわふわで長めの座布団を見つけた。素材を確認するため触ってみる。
――でも、結局普段は遥斗がひとりで座る感じだから、小さいのでもいいのかな?
「あ、これ可愛い!」
座布団を眺めながら考えていると、遥斗が俺の隣に戻ってきて、俺が見ていた座布団を指さした。
「これにするか?」
「うん。これだと一緒に座れるしね!」
俺とふたりで座るの想像してくれてたんだ――。なんか心の奥辺りがムズムズしてくる。
「色は、白と水色とベージュとピンクか……白川どれがいい?」
「どうしようかな? 菅田くんは?」
質問返ししてくると思った。
「白川は、何色が好きなの?」
遥斗は座布団の色を確認して「優しい色かな?」と言いながら首を傾げる。
「全部優しい色じゃん。この中ではどれが好き?」
「……水色、かな?」
「じゃあ、水色だな」
会計をしながら俺は、座布団でふたり並んで座る様子を想像した。
会計が終わると、店の中にあるフードコートで昼ご飯の牛丼を一緒に食べた。それから日用品売り場をさまよってから外に出ようとすると、出口とは逆方向に向かう遥斗。
「白川、出口そっちじゃないよ」
そう言いながら無意識に遥斗の手を握ったけど、少し経つと、はっとした。そして意識してその手を急いで離す。
遥斗は意識していたのだろうか。多分していないかな?
ちらっと遥斗の顔を見たら、ちょっと目が泳いでいた気がした。それは気のせいかもしれないけれど、手を繋いだことに対して、遥斗も意識してくれてたらいいのになと少し思ってしまう。
遥斗の手の感触を、しばらく思い出していた――。
***