近くに自転車をとめて、僕は水と本を出す。



影となっている橋の下、芝生の上に座って本を読み始める。



もちろんそれは恋愛小説。



クラス一の美少女と、クラス一の地味男の非日常な恋愛物語。



男子の方が一方的に片思いをしているように見えて、女子の方が好きだと思っている……、というじれったい話に僕は目が離せなくなる。



「ねぇ!」



綴られた文字を読み進めていると、後ろから透き通る高い声が聞こえた気がした。



人混みの中から聞こえる声、何度もうっすらと聞いた声。



もしかして、と思って振り返ろうとした時、彼女は僕の右隣にしゃがみ込み、僕の顔を覗き込んでいた。