のんびりとした足取りでやってきた彼は、花壇一つ一つ丁寧に水をやったあと、花と目を合わせるようにしゃがみこんだ。



じっ、と花を眺め続けた後、口元をほころばせて笑った。



上からじゃ口元が見えずらいけど、確かに彼の微笑みは見えた。



窓を閉めているから聞こえなかったけど、何か花に話しかけて一人で笑ってた。



その新鮮さ、そして面白さが何だか気になってしまって。



梓が帰ってきたあとも、チラチラ外を眺めて彼を見ていた。







彼は隣のクラスにいる矢野悠里(やのゆうり)という人らしい。



上から見えた彼の優しい微笑みにあっている名前だなって、私は彼の名前を知った瞬間に思った。