第一話:風薫る、ブルゴーニュ

「父は、私が生まれて15分後 私の唇にワインをしめらせた」

マダム・ルロワは、毎日、50~100種のワインのテイスティングをするそうですが、その運命は、生まれた時に定められていたのかもしれません。

実は、ルロワ家のワイン・ビジネスの歴史は1868年に彼女の曽祖父がルロワ社を創設した時から始まっているのです。ナポレオン3世の時代です。そして、祖父母、父へと引き継がれていきます。特に父は天才的な事業センスを持ち、ドイツ向けの輸出で儲けた金を元手に
、あの『ロマネ・コンティ』の権利の半分を購入します。そして、自らが持つ最良の技術、経営手腕をロマネ・コンティに捧げ、著名なブランドへと育てていくのです。

そういったワインへの強い想いが、誕生した15分後に赤ちゃんの唇をワインでしめらせるという行為に繋がったのかもしれません。

「私はワインの愛のもとに生まれたのです」

そして、23歳になった時、父親から事業を受け継ぎます。