1

 神官フォルカークは前世で日本人だった。
 転生した異世界で、前世の知識を活かしてこの世界の生活環境を改善しようとしたら、異端だと言われて田舎に飛ばされた。
 村人と平和な接触をする。神官だ、と喜ばれる。今まで都会の神殿からは顧みられることのなかった村だった。
 前にも女神官が来たけど、魔神の調査だけして帰っていった、薄情な、という村人。
 盗賊がくるよりマシだけどな、と笑う村人。
 神殿には魔神が封印されているという伝説がある。が、女神官たちの調査では見つからなかったらしい。
 魔神はかつて人々を救った。だが、その力は人を破滅にも導くという。
 だから魔神とされている。
 彼は寂れた神殿にすむ。
 村を襲撃しようとする盗賊の人影。


 2
 盗賊が村を襲撃する。
 村の男たちが戦い、女子供が神殿に逃げてくる。フォルカークは彼女らを神殿の地下にかくまう。
 彼は地下で隠し扉に気がつく。扉をあけて彼女らを入れる。
 そこには巨大な魔神像があり、村人たちはそれに祈る。
 この魔人像なんかおかしい、ロボットみたいだ、と思ったフォルカークはそれを調べる。
 ロボットだった。この世界では魔神兵と呼ばれる。魔神の正体が魔神兵だった。
 調べていると、搭乗口が開く。恐る恐る中に入ると、真っ暗だった室内が明るくなった。
 操縦席に座ると、脳に自動的に操縦法が入ってきた。
 魔神兵を動かして盗賊を追い払う。
 魔神が助けてくれた、伝説の通りだ、と村人は喜ぶ。
 ロボットから降りると、別の搭乗口が開き、初対面の少女、ルーが現れる。
 私はあなたのもの、と頬を赤らめて言うからフォルカークは驚く。


 3
 ルーは魔神兵の操縦のサポートをする人工生命体、ヘルファーだった。
 魔神兵の機能を彼女から説明を受けて確認する。
 魔神兵はかつての兵器であり、ここにあるのは量産品の最低ランクだった。過去の科学技術の遺産。現代では退化して再現できない。最低ランクであっても、現在のこの世界ではすごい力を持つ。
 これは兵器なんだよな、と複雑な気持ちになるフォルカーク。善き魔神だと喜ぶ村人に、なんと説明したらいいのか分からない。
 盗賊がまた襲撃してくる。
 彼らは魔神が人によって操作されるものだと気が付く。
 魔神すら手に入れようとするが、フォルカークが魔神兵を使ってこてんぱんにやっつける。捕まえて隣町の役人に引き渡す。
 フォルカークはこのロボットをあれに使おうと閃く。


 4
  フォルカークは魔神を使って村を開拓する。
 転生ものってしょっちゅう開拓してるけど、したくなるよなあ、と共感する。自分が便利に衛生的に暮らしたい。加えて、開拓できる力があるとやってみたくなるのが人情なのか。
 土木工事がやりやすかった。
 こんな使い方、パワーショベルと変わらないじゃん。人型パワーショベル。まあいいか。戦闘より平和的で。
 なぜ戦闘ロボットを人形にしたのだろう。畏怖を感じやすくするためだろうか。などとりとめなく考える。
 ルーは自分が思ってもみなかった使い方に喜ぶ。人工生命体で戦闘に特化していても、やはり普通の感情はある。
 防御と生活環境改善のための工事をする。まずは上下水道。
 井戸ができて喜ぶ村人たち。
 あの村か、と村を眺める軍人のような人影。


 5
 以前にも村に来た女神官が村に来た。
 警備隊からの報告を受けて
魔神兵の存在を国に知られてしまっていた。
 女神官カシュアリーデは、王都にある魔神兵の操縦者でもあった。魔神兵の捜査に自ら志願した。
 彼女のヘルファーのエルフィーは人見知りのようだった。フォルカークに対しては静かに敵対的。
 村人たちはなにごとが起きているのか、と好奇心と不安。
 カシュアリーデは魔神が量産型であることなどを確認する。
 フォルカークはカシュアリーデに王都に来るように言われるが、拒否。
 村人が魔神を隠したことにしてもいいんだ、その場合は軍を派遣するぞ、と脅すカシュアリーデ。
 脅迫だ、と怒るフォルカーク。だが、権力には逆らえない。
 村人たちを守るため、最後、魔神兵をともなって王都に行くことになる。

 
 6
 王都に行く。
 デモンストレーションでカシュアリーデと戦うはめになる。
 操縦になれていない、ましてや戦闘なんてしたことのないフォルカーク。ルーのフォローがあっても、戦闘の技術がないので負ける。
 が、いい勝負だった、と彼女は笑う。
 あと1体、大神官長の光の魔神兵があるという。見せてもらったが立派な見た目だった。
 カシュアリーデとヘルファーたちと一緒に王都見物。
 レオンという男と知り合う。無能と有名な国王と有能大神官長の対立を知る。
 大神官長に神殿に忠誠を誓えと言われ、宰相から、殺されたくなければ王に忠誠を誓えと求められる。どちらも拒否する。
 宰相によって牢獄に入れられる
 大神官長の力によって助けられる。
 なんかおかしいな、と思うフォルカーク。


 7
 助けてくれた大神官長から恩を着せられる。
 村の土木工事をしていたと知った大神官長に、王都の土木工事をしろと言われる。
 代わりに村が発展するようにしてやると言われる。間接的にであっても村のためになるなら、とフォルカークはしぶしぶ承諾する。
 国王の前で大神官長への忠誠を誓約をするはめになる。誓約を破ると殺される。
 誓わないと魔神兵をとりあげる、と言われる。ルーは離れたくない、と言う。
 仕方なく誓約をすることにするが、大神官の発言がきになる。なぜ神への忠誠ではなく大神官長への忠誠なのか。
 各国の大使の前で、神殿で誓約する。
 大神官長に仕える誓約のはずだったが、唱えるときに変えた。公平に神に仕える、と。
 大神官長が得るはずだった魔神兵の力はどこにも属さなくなった。
 国王はなぜかホッとしていて、大神官長は苦虫を噛み潰したような顔。
 自分の処遇がどうなるか、とフォルカークは不安に思う。


 8
 フォルカークは表立っての処分はされなかった。
 田舎に帰りたいが、なんだかんだと引き伸ばされる。
 市民との交流会にでろ、土木を手伝ってくれ、などなど。神殿に関わる工事ばかりなのが気になった。
 魔神兵で土木工事をするのは地域に偏りが出る。すべての人に還元できる方法はないかと考えるフォルカーク。
 祭典があるからそれにも出席しろと言われる。カシュアリーデからも、帰るのは祭典に参加してからでもいいだろ、と言われる。
 エルフィーはフォルカークに早く帰ってほしいらしい。
 お祭りだあ、とルーは単純に喜んでいる。
 大神官長は祭典のために光の魔神兵の準備をする。
 カシュアリーデは大神官長に呼び出される。
 機械でなにかをされるカシュアリーデ。


 9
 祭典の日、カシュアリーデの風の魔神兵と、大神官長の光の魔神兵が展示される。
 光の魔神兵のヘルファーであるクラーラを見かける。
 兵士たちに侮辱的にからかわれている。フォルカークが助ける。
 クラーラはフォルカークに感謝する。普段から粗雑な扱いを受けていると知り、フォルカークは憤る。
 再度、フォルカークとカシュアリーデは模擬戦をすることになる。
 カシュアリーデの様子がおかしいことに気が付く。話かけてもぼうっとしている。
 模擬戦の最中、エルフィーから通信が入る。お姉様が操られているの、助けて、と。
 彼女自身で逆らってカシュアリーデを助けることはできない。
 だが、フォルカークの魔神兵はボロボロにされて負ける。操縦席を狙われる。
 ルーはフォルカークを守って壊される。
 

 10
 魔神兵のないお前など用はない、と大神官長に言われ、田舎に帰される。
 フォルカークはルーの一部だった部品を大事に持って帰る。
 傷心して田舎の神殿で勤める。
 村ではひそひそされる。魔神の加護を失って、これからどうなるのか、と村人は不安がる。
 それを否定する元気がフォルカークにはない。自分のせいでルーが死んでしまった、と自分を責める。
 魔神兵の整備をする神官が、フォルカークの乗っていた魔神兵を確認する。そして、肝心の部品がないと気がつく。 
 ルーの心臓部がない、と報告を受ける大神官長。あれがないとヘルファーを再生できないし、魔神兵の修理もできない。
 カシュアリーデを魔神兵ごと派遣する。
 フォルカークが逆らうなら葬れ、と大神官長は彼女に命じた。


 11
 村に帰ったフォルカークは、旅の荷物に手紙が入っていることにき気づいた。差出人はないが、エルフィーだと気づいた。ルーの直し方が書いてあった。
 田舎の神殿の奥深くに再生のための機械があった。ルーの部品を置くと、再生が始まった。
 蘇ったルーと抱き合って喜ぶ。が、気がつくとルーは裸だった。
 フォルカークは慌てて上着を着せる。
 村にカシュアリーデの魔神兵が来る。
 暴れる魔神兵。
 外に出たフォルカークは驚く。
 カシュアリーデに、私を殺せ、と言われる。操られている。逆らえない。
 できるかよ。と反論するフォルカーク。
 しかし、このままでは民を害してしまう。とカシュアリーデ。
 カシュアリーデと話をして、なにかの機械が原因らしいとわかる。
 わかった。俺を逮捕しろ。というフォルカーク。
 はあ!? となるカシュアリーデ。


 12
 カシュアリーデに捕まって王都に連行されるフォルカーク。
 王都に着くと、即座に国王軍に引き渡された。引き渡されるときに国王軍と神殿の軍とでもめた。結局、国王軍がフォルカークの身柄を預かる。
 再生されたルーはフォルカークとの契約解除をする予定で待機。たが、こっそりカシュアリーデが呼び出された秘密の部屋を探す。
 レオンがフォルカークに会いに来た。レオンは実は国王エアカード。
 お前を見込んで頼みがある、と国王がフォルカークに言う。
 大神官長は魔神兵を使って国を支配し、ゆくゆくは隣国へ攻め入ろうとしている。宰相は彼の手先で国王の評判を悪くしている。
 俺は大神官長の野望を阻止したい。力を貸してくれ、と。
 拒否するフォルカーク。それが正義である保証はない。
 我が国の防衛以外には使わないと誓う国王。
 無能の噂は大神官長が流していた。自分が謀反を起こしたとき、無能な王から国民を守ったと言うために。
 国王は魔神の修理をしてくれた。
 大神官長の反乱が、と一報が入る。
 操られているカシュアリーデのロボットが王城に迫っている。
 大神官長が王位を得ようとして反乱を起こした。
 ルーと魔神兵を手に入れたつもりの大神官長は、好機が来たと思っていた。

 13
 完全に修理が終わらないまま、フォルカークはルーと魔神兵で出撃する。カシュアリーデの魔神兵と戦う。
 なんとか主人公が勝つ。カシュアリーデの乗る風の魔神兵が壊れる。
 ルーが伝えた部屋に国王軍の兵が踏み込み、機械を壊す。
 カシュアリーデがマインドコントロールから覚める。
 フォルカークは不利。
 フォルカークはみんなの命を守る! と叫ぶ。
 「発動条件を確認しました」
 とルーが言う。
 実は主人公のロボこそが光の魔神兵だった。彼の真剣さがルーのプログラ厶を発動させ、魔神は真の姿を現す。
 かつて、光の魔神兵の力を恐れた人物が、光の魔神兵と量産型を入れ替えた。
 すりかえられていた大神官長の魔神兵は量産型のへっぽこ。過剰な装飾があるぶん、動きも悪い。
 だが、人質をとられてフォルカークはピンチ。
 フォルカークに恩を感じているクラーラが命をかけて大神官長に逆らい、隙をついたフォルカークが勝つ。
 大神官長は謀反を企てたとして処罰。
 フォルカークはヒーローとして遇されるが、やはり国王の配下にはならない。神の使いと周りにもてはやされる。
 国王に、魔神兵は封印すると言うフォルカーク。そなたならば嘘偽りではないだろう、だが民が危機の際には協力してほしい、と国王。了承するフォルカーク。

14
 国王と各国の大使の前で、自分はどの国にも所属せず、そのかわりに正しく魔神を使用すると誓う。
 国王は了承する。
 新しい大神官長はフォルカークを神の使いと崇める。
 彼は神官と国王に、国の整備を勧める。
 オーバーテクノロジーは良くない、と思ったので、土木工事であっても前みたいなやり方はしない。
 まずは識字率を上げること。そうすれば勉強する人が増えて、ゆくゆくは生活環境が改善される。気の長い話だが、急な改革はきっと反動も大きく、彼らには馴染めないだろうと思った。そのかわり不便なところはどんどんメモして改善を提案していく。国王にコネができたのだ、それも可能だろう。なんといっても貸しがあるのだ。
 魔神は封印し、村人たちと仲良く過ごす。
 魔神の封印に来た女神官は、パートナーとともにほかの村に巡回に行く。ほかにも魔神が存在するなら対処しなくてはならない。その調査だ。
 また来るよ、と彼女たちは朗らかに笑う。



 終