自分らしい、とはなんだろうか。
人から見える自分と自分が思う自分は、必ずしも一致するわけではない。
人には多かれ少なかれ、隠していることや偽装していること、嘘のひとつやふたつくらいあるだろう。
そのままの自分をすべての人が愛してくれるわけはないし、世の中を生きていくためには必要なことだろう。
なら、何をもってして、これが自分だ、と言い切ることができるのだろうか。
何かを隠している自分も、何かを偽装している自分も、嘘をついている自分も、紛れもなく“自分”であることに変わりはないのに。
誰かに愛されるためには、自分の何かを脱ぎ捨てなければならない。
または、厚い皮を被ってでも、隠すしかないのだ。
少女はまだ、怖かった。
新しい世界に足を踏み入れるのは勇気がいる。
そこに待ち受けているのが幸か不幸かわからないから、足はすくむし不安になるのだ。
だけど、ひとりじゃなく、ふたりなら。
少女は何にでもなれるし、どこにだって行ける気がしていた。