気を取り直して服を着替えて部屋を出た弦はルチオ・ボッティの店に向かったが、ふと足を止めて行き先を変えた。イーストヴィレッジへ行って手土産を買おうと思いついたのだ。アメリカ人にとって大事な祝日に店を開けているところはほとんどなかったが、日本人がオーナーのあの店なら開いているかもしれないと期待して大きな通りを一目散に走った。

 角を曲がると、赤と白に塗り分けられたシェードが見えた。開いていた。期待した通りだった。喜び勇んで中に入ると、いつものように日本オリジンのパンが並んでいた。あんパン、ジャムパン、カレーパン、メロンパン、総菜パン。それを2個ずつ買ってルチオの店に急いだ。