「キャー」
 目の前で転んだ女性の大きな声で今に戻った。
 ここはニューヨーク。知り合いのいない異国の地。そして自分は語学学校に通う日本人。そしてアルバイトを探している。 
 出国する前に父親から言われた言葉が重くのしかかっていた。「今年は英語の勉強に集中しなさい。しかし、年が明けたらアルバイトを探して働きなさい」と強く言われていたのだ。
 何をしたらいいのか……、
 呟きが氷の上に落ちた。それをスケート靴が()くと、バラバラになって氷の中に吸い込まれていった。そして、何事もなかったかのように跡形もなく消えた。
 そろそろ真剣に探さなければ……、
 力なく首を横に振りながら、重く感じる足で帰り道を辿った。