「……幼稚園からの腐れ縁。家がお隣さんなんで、家族ぐるみの付き合いも多いんです」

「ほうほう。それで惚れちゃったってわけかぁ」

「この一瞬の話で、どこに惚れる要素があったんですか」

「まあまあ、続けたまえ」



 続けづらいな。この人に話すのは大変だよ。いらない突っ込みが次々とくるんだから、ため息しか出ない。
 話をここでやめてしまうと光莉さんにまたぐわんぐわんと揺すられると思ったから仕方なく話を続ける。仕方なく、だ。



「幼なじみのあいつの名前は、優衣っていって。……優衣は昔から明るくて元気な奴だった。僕とは正反対の性格」

「ふーん」

「だけど優衣は正義感が強すぎるのか、クラスで馴染めないことも多かったんですよ」



 小学校6年生のとき。卒業式まであと一か月くらいしか残っていないときに、優衣はクラスのみんなから無視されるようになった。
 きっかけは些細なことだった。教室の掃除をサボっていたクラスメイトに優衣が注意したことが、みんなの気を悪くさせたみたいで。それから優衣は卒業まで、僕以外のクラスメイトに無視されるようになった。でも、それは優衣が悪いわけじゃなくて、掃除をしなかったクラスメイトが悪いと思うけれど。



「クラスで居場所がなくなった優衣に話しかけていたのは僕だけだった。そんな僕に優衣は言ったんです」

「……」

「私に話しかけると智也まで仲間外れにされちゃうよ、って」



 僕は仲間外れにされることとかどうでもよかった。優衣が寂しい思いをしなければそれでいいと思っていた。
 だから僕は何度だって優衣に話しかけた。クラスメイトが優衣を無視する中、僕だけは優衣の味方でありたいと思って。