「クラスに馴染めなくていつも独りぼっちなんですよ。いじめられているわけとかではなく。ただ、あの楽しそうな空気の中に僕なんかが居ちゃいけないんだ、って錯覚するようになって。居場所もないなら学校行く意味ないかなって。学校行くのやめました」



 まくしたてるように話す僕。きっと『この話にこれ以上触れて欲しくない』の気持ちの表れ。
 ばーっと思いきり喋った僕だけど、これで再確認できた。やっぱり僕は学校には行けない。学校に行っても楽しいことがない。居場所がない。行く意味がない。それを再確認できた。
 これでいいんだと思う反面、どこか心にぽっかり穴があいた気がした。
 光莉さんもこんな話聞かされて困るでしょ。気まずくなって早くここから居なくなってくれたらいいのに。
 そう思って光莉さんをちらりと見ると、光莉さんはなにを考えているのか、空を眺めていた。
 ……呑気。呑気だ、この人。
 そう思っていると不意に光莉さんがこちらを見る。



「この世界の中には選択肢がいくつもある」

「……まあ、そうですね」

「この手のどちらかのなかに、飴玉が入っているとする。君はこの飴玉が欲しいとしよう」



 光莉さんは両手をそれぞれ握った。それからふと真剣な顔になって口を開いた。



「飴玉を得るために、右を選ぶか。左を選ぶか。……君は左を選んだとしよう」

「はあ」

「だけど、左を選んだら飴玉はその手に入っていなかった」

 光莉さんが考えていることは分からない。分からないから言っていることも分からない。