「その幼なじみって女の子?」

「そうです。腐れ縁ってやつです」

「でも、その子のために本を読んでるんだぁ?」

「別にそういうわけじゃ」



 ……最初は面倒くさいなとは思った。僕は本を読むことが好きなわけではないし。感想も言わなきゃいけないし。だけど、あいつの本を選ぶセンスはなかなか良くて。本を読んだ後は、少しだけ心が豊かになった気さえする。
 光莉さんには『幼なじみが本を押し付けてくる』と言ってしまったけど、僕はそれが楽しみだったりもする。
 そんな素直じゃない僕の気持ちを見透かしたような光莉さんの笑みから、僕は目を逸らす。



「その幼なじみちゃんは、今日はどこにいるのー?」

「……学校で勉強してると思います」

「ん? え? もしかして、君、高校生とか⁉」

「はい。高校生です」

「大学生かと思ったぁ。智也くん、大人っぽいし、私服もおしゃれだし」



 こういうとき、なんて返せばいいのか分からない。ありがとうございます、も、なんか違う気がするし。否定するのも違う気がする。



「そっかそっかぁ。高校生かぁ。若いなー」

「……高校生、なんて、胸張って言えないですけどね。僕、学校行ってないし」



 学校の話はしたくない。学校について聞かれたくないからこそ、自分から話してしまう。