ジリリ、ジリリリ。
 目覚ましの音が部屋に響く。僕はうるさく鳴る目覚ましを止めて飛び起きた。
 時計は午前6時を示している。
 今日は私服じゃなくて制服に袖を通す。久しぶりの制服。嫌でも緊張してしまう。
 緊張という名の制服に包まれた僕はリビングへ向かう。まだ母さんと父さんが居る時間だ。



「お、おはよう」

「おはよう、智也。って……」

「智也……」

「僕、今日からまた学校に行くから」



 僕は朝ご飯を食べていた父さんの隣の椅子に座る。そんな僕を見て、母さんはお茶碗にご飯をよそってくれた。



「……学校行くのね。でも、智也。言ってくれなきゃお弁当用意できないじゃないの」

「購買で買うからいいよ」

「ダメよ! 智也が学校に行く日はお弁当毎日作るって、母さん約束したのに!」

「誰と約束したんだよ」

「母さんと母さんの心の中の人」

「誰だよそれっ」



 僕は吹き出すように笑う。そんな僕につられて、母さんと父さんも笑った。
 楽しい朝に、開いている窓から柔らかな風か吹き抜ける。家族で過ごす朝がこんなに楽しいなんて知らなかった。だけど、知ることができた。




「行ってきまーす」

「行ってらっしゃい、智也」

「気をつけるんだぞ」



 二人に見送られて僕は家を出る。
 バタンと玄関の扉が閉まる。扉が閉まるまで、父さんと母さんは手を振ってくれていた。



「……智也、変わったな」

「そうね」

「大きくなったな」

「ええ、本当に」